東京のゴルフが遠くて高くて苦痛が伴う「遠高苦」だとすれば、熊本は近くて安くて気楽にいける「近安楽」だ。

当然、ゴルフに行く機会も増えてくる。もはや何の気兼ねもいらない。たとえ接待であろうと、ここは宗旨替えをして、勝つゴルフを目指さなくては。自信たっぷりとゴルフ場に出かけた。100を切るのは当たり前だ。

だが、4年近くも、身に染み付いた悪癖は簡単には抜けてくれなかった。空振り、チョロは当たり前。お池とバンカーには必ずといっていいほど入ってしまう。2打も3打も刻んで、やっぱりドボンというのは悲しいね。どういうわけか真横にあるお池に入れたこともある。焦れば焦るほど悪癖は堅実に育っていった。

ある日、突然、気が付いた。これはクラブが悪いからだ。思い切って、ヘソクリをはたいて一番新しい「高級クラブ」に買い換えた。ところが社内の空気は冷たかった。「お金でスコアーは買えませんぜ」「クラブより腕を変えなけりゃあネ」「クラブがかわいそうだ」・・・。

だから無知蒙昧の輩は困る。別人になった僕は、燦然と輝く「高級クラブ」を愛撫しながらゴルフ場へと出かけた。いまに見ていろ。ドラコンやホールインワンも夢ではない。その場合に備えてゴルフ保険にも加入した。

なのに、無知蒙昧の輩の発言は正しかった。スコアーは減るどころか、増える場合すらある。そうか、力み過ぎなんだ。これからは力を抜かなければ。と思いつつ練習場にもセッセと通った。練習場ではうまくいった。ところがゴルフ場に行くと、元の木阿弥になってしまう。

そこで僕は再び気が付いた。これはゴルフ場が悪いからだ。もっと早く気付くべきだったんだ。というわけで、あちこちゴルフ場を変えてみた。しかし、なにも変化は生じなかった。

社員たちは密かに僕のことを「ライオン丸」と呼んでいる。
ライオンは「百獣の王」であり、僕はいつも110以上叩くからだそうだ。

馬鹿にしている。

さすがに自信をなくした僕は、最近では「ゴルフをやりますか」という質問には「やらない。ゴルフもどきならやります」と答える。しっこい人はさらに「どれくらいで回りますか」と聞くから、それには「だいたい2時間とちょっとぐらい」というか、「1万6千歩ぐらいで回ります」と答えることにしている。スコアーは企業秘密だから、そん

先日、社内コンペがあった。
午前中は珍しく、さしたるミスもなく51だった。この調子なら100を切るのは間違いない。ハンディが大きいから「今日は優勝ですね」とおだてあげられた。気分は爽快。

勧められるままに昼食時に前祝としてビールと焼酎を一杯ずつ飲んだ。午後はいささかふらつく足を気にしながら回った。不幸なことにクラブを振るたびに「あれっ」、「あれっ」という連続だった。終わってみれ62。やっぱり「110の王」ではないか

最後に僕はやっと気が付いた。「これは同伴者の人柄や質が悪いからだ。一人で回れば絶対100を切れるぞ」。