あれよあれよという間の衆院解散。永田町の住人たちも、大半が唖然としたに違いない。なぜなら小泉首相の言動が、あまりにも従来の永田町の論理とかけ離れていたからだ。恐らく永田町の事情に詳しい人たちほどびっくりしただろう。

政治家は時としてウソをつく。理由は3つある。ひとつは政界の動向の見通しが付きにくいからだ。「政界の一寸先は闇」といったのは策士として有名だった川島正二郎だが、情報通の政治家だって、読み間違うことはしばしばある。その場合、正しいと思って話したことが結果論としてはウソをついたことになるわけだ。

2つ目は党内や他派閥の情報かく乱を狙って、あえてガセネタを流す。あるいは世論の動向を探るために流すウソの情報もある。これは永田町で「瀬踏み」とよばれる。小泉首相がかって属していた旧福田派には、この手の情報が多かった。

3つ目は世論や政界に余計な波紋を広げないために、あえてウソを付く場合がある。永田町では「首相は金利と解散についてはウソを言ってもいい」というのが定説だ。首相の金利に関連した発言はただちに株価に反映する。解散も、その臭いだけで代議士は走り出す。どちらも影響が大きすぎるからだ。かって、だれが見ても行き詰った政局を打破するには解散しかないと言う場面で、某首相は報道陣に「頭の片隅にも解散はない」と言い続けた。そして抜き打ち解散。その後、某首相は言った。「頭の片隅には絶対なかった。頭の真ん中に解散はあった」と。

小泉首相は「参院で郵政法案が否決されれば、衆院を解散する」と以前から、言い続けていた。永田町の住民たちは、「首相のことだからひょっとしたら」と思いつつも、大半は「首相が解散で本当のことを言うわけがない」として、参院に対するブラフ(脅し)と受け止めていたのではないか。解散前夜、首相にあった森喜朗氏が「首相は変人以上だ」といったのは、解散の話が本当と悟ったからだろう。あるいは反対派の亀井静香氏が解散の報に呆然自失していたのも、永田町の常識ではありえない話だったからだ。

僕も昔、長い間、政治部記者をやっていた。その間、政治家には何度も騙された経験がある。ところが小泉首相は、こと解散については一切ウソをいわなかった。その良し悪しは別にして、既存の政治家でないことだけはあきらかだ。

ともあれ9月11日には総選挙の投票が行われる。争点は郵政法案の賛否だけではない。高齢化社会への対応、もたつく経済対策、行き詰まった地方・国家財政、年金問題、ひいては現在の政治体制のままでいいのかという大きな問題も俎上に上がる。戦後政治のまさにエポックメーキングとなろう。暑い夏がさらに暑くなることは間違いない。

KABではこれまでも選挙報道には、他社以上に力を入れてきた。多角的報道に加えて、正確な当落報道では他社に決して劣らない。その方面では「選挙のKAB」としての評価もいただいている。今回は、選挙期間中、新社屋への移転という問題も抱えている。新しい放送機材の習熟訓練も進めなければならない。はっきりいうと大変な事態だ。それでも選挙報道では皆さんの期待をうらぎらないよう、頑張る。