僕は子供のころからほとんど理髪店に行ったことがない。いまや全て自分でハサミを使って髪を切る名人芸と言われるぐらいだ。

歴史はご幼少のころまでさかのぼる。我が家は4人兄弟だった。薄給の公務員だった父は、床屋代を節約するためバリカンを買ってきて、子供たちの頭を刈った。みんな坊主頭だったので、多少のトラ刈りは気にならなかった。問題は、時折、バリカンの刃に髪が挟まることだ。すごく痛い。文句をいうと「男は少しぐらい痛かったっちゃ、我慢せにゃ」とか言われて、相手にしてもらえなかった。という訳で、自らの身を守るために、自分で丸坊主にする技術を身に付けた。

高校時代になると、長髪が認められた。思春期ということもあってやむを得ず、理髪店に行くようになった。ところが、これがダメだった。大きな鏡の前に座らせられる。我が姿を眺めざるをえない。その容貌の怪異さに呆然とさせられた。鏡の中の我が眼と自分の眼が合うと、もうダメだ。思わず脂汗がタラリと流れてくる。

ガマの油売りの口上によると、油を作るには、前足が4本、後足が6本の四六のガマを四面が鏡張りの箱に入れるそうだ。ガマは己の容貌の怪異さに脂汗を流し、その油を煮詰めてガマの油ができるとか。僕には四六のガマの心情が手に取るように分かる。あの口上は決してデタラメではないとすら思えてくる。

もうひとつ。当時、読んだ志賀直哉(だったと思う)の小説に、床屋の話が出てくる。お客の髭を剃っていた理髪師が突然、おかしくなって、喉仏を剃刀で切り裂くのだ。これは怖かった。それ以来、顎から首にかけて鋭い剃刀の刃があたると、鳥肌が立ってくる。脂汗と鳥肌が揃えば、理髪店だって「なんだ、この客は」と思うだろう。ひょっとしたら腹を立てた理容師がおかしくなるかもしれない。そう考えると、ますます理髪店から足が遠のいていく。

かくして僕はハサミ一丁で我が頭の理髪をすることになった。もちろん、最初からうまくいくはずがない。髪の毛がギザギザになるのはザラ。耳の上をハサミで傷つけたこともある。しかし、必要に迫られると、よくしたもので上達も早い。コツは簡単だ。人差し指と中指の間に長くなった髪を挟み、指の下にハサミを入れてザックリやればいい。髪の長さの調整も自由だ。頭の後ろだって鏡を見なくても、きれいに切れるし、ギザギザになることもマレだ。

さすがに結婚式の前の日は、弟たちに髪を切ってもらった。ところが披露宴の最中から、一部の髪の毛が逆立ってきた。いくら撫で付けても立ってくる。最後は諦めてしまった。それから頭は絶対に人任せしないようにしている。自己責任を貫徹して、愛する妻にも頭は触らせない。妻はいささか寂しげだが、仕方がない。

ちなみに僕に理髪店の営業の邪魔をする考えは全くない。種明かしをすると、僕の髪は天然パーマに近いクセ毛なのだ。だから多少、ギザギザに切っても、ほとんど目立たなくてすむ。皆さん、節約して自分で理髪しようなんて考えないほうがいいですよ。

コケボウのひとこと

社長の髪型を、まじまじと見るなんて失礼なことは、さすがにしたことなかったけど、
ご自分でカットされているとは思えない!
くらい普通(プロが切ったのに見劣りしない)ですね。
(案外)器用なんですね。
しかし、床屋さんに行きたくなくなった理由のひとつに
「鏡をみたくない」
というのがあるのにはビックリです。
人生皮肉なものですね。
鏡も見たくない人だった社長が、
これだけたくさんのコマーシャルに出演されて、
お顔がひろーく県民の皆さんに知られることとなったのですからね。
さて、そんな門垣社長の新しいコマーシャルですが、4月1日から放送することになりました。
社長!鏡越しではなく、TV越しにご自分のお姿をじっくりご覧ください。
髪型もきまってなかなかですよっ