ボクらの先輩で、KABの社長、会長をつとめられた山本博昭さんが本を出版された。題して「蛇の目のから傘」。新書版で253頁。雑文集ということだが、なかなかどうして立派な随筆集だ。もともと朝日新聞社時代は、復帰前の沖縄やベトナム支局長などを歴任した社会部記者だっただけに、名文(迷文ではない)だ。内容も硬軟取り混ぜて、ついつい読まされてしまう。

折角の出版なので、関係者を集めて「出版を祝う会」を開こうという話になった。ところが、山本さんは「居酒屋で、4、5人でやるのならいい。ホテルでパーティーなんぞはお断りする」とにべもなく拒否。しかしここで引き下がったのでは、男がすたる。植田(アナゴ)社長と共同作戦を張った。「イヤイヤ、祝う会は名目で、本当は出版を口実に、みんなで集まって、大いに飲み食いして騒ごうということです」とかなんとか説得。山本さんも不承不承、了解された。

しかし、ただ祝う会を開いたのでは芸がない。そのうち「はじめに」という前文に、この本は子供や孫に「遺言」として残すためにも書いたものだ、とあった。ボクは早速、飛びついた。「遺言として書かれたのだから、生前葬形式にしたらどうか」。アナゴ社長も、パクリと食らいついた。かくして本人に内緒で、生前葬を挙行することにした。アナゴ社長が通告したのは、開式の寸前だった。

ホテルでの祝う会には約150人が出席。アナゴ社長は発起人挨拶で、生前葬に至るまでの経過を説明し、「沢山の方にご会葬いただき、ありがとうございます。会費はご香典として、香典返しには山本さんの本をお持ち帰りください」とやった。会場は一瞬、唖然としたが、爆笑に包まれた。そこまではよかったが、アナゴ社長は、突然、ボクを葬儀委員長に指名し、挨拶を促した。事前の打ち合わせでは、ボクは閉会の挨拶のはずだった

立ち往生したボクは「口からでまかせ」をいうことにした。つまり生前葬には5つの条件が必要ということだ。一つは長生きであること。ノンベンダラリと長生きしていてもいい。二つ目は健康であること。病床にある人の生前葬では人権問題になる。三つめは人徳があること。人徳がなければ誰も会葬には来てくれない。四つ目は容姿端麗・品行方正であること。この四つ目に山本さんが合致するかどうかは不明だ。最後は長生きしてほしい人ということだ。生前葬をしてもらうと、長生きするという風説がある。山本さんには長生きしてもらいたい。だから生前葬にはうってつけだ。

以上の5条件には何の根拠もないし、どんな文献にも載っていない。しかし、いかにもありそうな話ではないか。山本さんは「会葬が終われば、私は成仏して生き仏になる」と言われた。ボクは直ちに訂正してやった。「山本さんは生き仏ではない。ナマ仏です」

会場には幸運にも玉名のお坊さんもいた。ボクは閉会挨拶で、会葬御礼を申し上げた後に、このお坊さんを壇上に呼んで、中締めの挨拶替わりに、お経をあげてもらった。かくして山本さんの生前葬は、盛り上がりに盛り上がって、閉幕した。どうか山本さん、一旦成仏したうえで、末永く長生きしてください

コケボウのひとこと

生前葬だなんて、悪乗りもいい加減にしないと、と思いますが聞くところによると当の山本元会長も悪ふざけに完全に乗っかって楽しんでおられたとか。
会長によると、生前葬には根拠の全く無い条件があるようですが、山本元会長は、間違いなく「容姿端麗で品行方正」だと思う…。
歴代社長の中で「容姿端麗で品行方正」の順番をつけるとするなら、間違いなく1番が山本元会長で最下位が…ねぇ
マイナス点は「容姿」の方か「品行」の方かはご想像にお任せするとして、生前葬の条件の中にある「長生き」に関しては、その分のマイナスを取り返す勢いで断トツ1位に躍り出るはず。
条件の平均点を出すと、4人の社長みんなが同じになるようになっているのかもしれません。
先日突然の告白にビックリ仰天した「がん疑惑」
その後の検査の結果を聞いてみましたら「もちろんガンだったよ」と何故か得意げに話してくれたのですが、面立ちそのものが、若干笑いを取る感じの風貌なので真相は不明。
いずれにしても、悪い所は切って取ってしまったのですから大丈夫でしょう。
「容姿端麗で品行方正」って条件はスレスレでクリアということにして、ここのコラムでもまとめて出版しましょうか
もちろん生前葬のご香典返しのために。
本末転倒な話だけど、まっいいか。