KABの社内に「3人ヤクザ」と呼ばれる者がいる。共通点は3人とも北九州は小倉の育ち。流れ、流れて、現在は熊本に定着した。眼光鋭くドスの効いた低音で、日常の会話も、威力がある。その上、よたって歩く。気の小さいボクなんて、その姿を見ただけで、ビビってしまう。できればなるだけ会いたくないが、仕事柄、そうもいかない。だから恐怖の毎日を過ごしている。

年齢順にいくと、まずは植木監査役。ボクは駆け出しの新聞記者の頃、北九州で一緒だった。一目見て、この人は職業選択を間違っていると感じた。同じような風体の記者が3人いて、連れだって繁華街を闊歩すると、本物のヤクザが道を譲るほど迫力があった。警察関係にはめっぽう強く、ボクなんか足元にも及ばない特ダネ記者だった。だから「アンチャン、ちっとは仕事ば、しない」と小倉弁でよく脅されたものだ。

実は、ボクの前の社長、山本博昭さんも北九州は若松の生まれ、育ちだった。だから監査役と山本さんは、よく論争していた。テーマはいつも同じ。監査役は小倉生まれの岩下俊作「富島松五郎伝」無法松男らしい代表的人物と主張し、山本さんは若松生まれの火野葦平「花と竜」の親分、玉井金五郎男らしいと反論していた。熊本県人のボクにとっては、どちらも知的レベルの低いヤクザの変形にしか見えないが、二人にとっては郷土の名誉をかけた重大事らしかった。

二人目の「ヤクザ」は、本名を出すと後が怖いので、仮にアナゴ社長と呼んでおこう。中学、高校が小倉で、中学の同級生に本物のヤクザが多いのが、自慢のタネのひとつ。そこで思想的、肉体的薫陶を受けたに違いない。なにしろやる事、喋る事に、ヤクザの香りがプンプン臭う。さらにひょろ長い長身が花を添え、頭ひとつ上から話しかけられると、若頭クラスだと真っ青になるほどの迫力がある。「社長」にしておくのが、もったいないくらいだ。本人は「文化人」を自認しているが、どう見ても「ヤクザ文化人」にしか見えない。

3人目は、若手の営業マン、O君だ。もともと営業部門にはヤクザっぽい部員が多いが、O君は頭ひとつ抜けている。なにせ実家は小倉祇園太鼓の店。バチさばきも鮮やかで、気合が入っている。もとは別の会社にいたが、営業手腕とヤクザっぽいところを買われて、わが社に引き抜かれた。それなりの実績を挙げてはいるが、得意先から、「脅し、たかり」で訴えられないか、気がかりだ。今のところ、そういう動きはない。

おっと、書き忘れるところだった。2階の編成業務局の肉食系女性3人から「ヤクザは男ばかりではない。女性もいることをお忘れなく」と、注文がついた。そうか「姐御(あねご)3人組」だったのだ。どうりでボクの顔を見る度に「報復、報復」と恐喝するが、これも姐御の体質だったのか。

もうひとつ、社内から警告があった。「本物のヤクザから文句が出る」というのだ。どういうことかと言うと「俺たちは3人ヤクザより知性も品位も品格もある。一緒にするな」だって。なるほど、直ちに納得できる。ヤクザ諸兄の後始末はアナゴ社長派の広報担当、ヤッコダコに頼んでおこう

ヤッちゃんのタメ口

おいおい、言いたいことだけ言ってオレ様に後始末を押し付けるな!だいたい会長の後始末役コケボウだろうが…まったく。
植木監査役がかつて報道制作局長をされていた時、オレ様はとてもとてもお世話になった
口ぐせのように話されていたのが「楽しいものを作れ」「オレが責任をとる」の2つ。
「それじゃあ頑張ります!」と言うことで、オレ様はいろいろなニュース企画にチャレンジした。しかし肝心の評価はというと、「お前の食事シーンはうまそうに見えないからやめろ!」とか、情緒あるナレーションに挑戦すると「気持ちが悪いからやめろ」。
更に、オレ様がオートバイに乗って名所を紹介する企画については「オートバイのシーンは飽きた!」との評価。“オートバイに乗る”のが売りの企画だったのだが…。う~ん、誉められた記憶がないぞオレ様は…。(しばし落ち込む)
でもいろんなことに挑戦させてもらったのは事実だし、そのことがいろいろな糧になっている…はずだ。まあ、今思うと無茶なこともしたが、若気の至り(でも30代だったが)だろう。
んっ、この文章を書いているとどこからか殺気が…。斜め前方から“肉食系トリオ”から“姐御3人組”にパワーアップ?したメンバーの1人がかわいらしい顔から想像出来ないような殺気をオレ様に…(汗)いや、別にオレ様が“3人組”のことを書けと言った訳じゃないし、まして…。あっ、席を立った。もしかして会長室に“報復”に行くのか?
見なかったことにしょう。うん、それがいい。会長が無事でいることは祈ってやろう。