テレビのアナログ電波が停止して、早いもので一カ月が過ぎた。ボクは抗議の電話が殺到すると思っていた。KABでも臨時電話を設置し、受付の社員も待機していた。確かに停波のお知らせ画面に切り替えた直後には抗議苦情の電話が多かった。でも時間が経つにつれて、どうしたらデジタルを見られるかという相談が増えた。結局、この日は受信相談が92件、苦情が27件だった。受信者の理解も、まずまずだったと言えるだろう。

そもそも最初にアナログからデジタルに切り替える話を聞いた時に、ボクは正直、相当、無理があるなあ、と感じていた。まず放送局側の事情だ。KABの場合、デジタル送信設備費用だけで50億円以上必要だ。その上に70か所の中継所もデジタル用に整備しなければならない。当然、全体の費用は年間収入をはるかに上回る。結局、借金することで、何とか切り抜けた。

KABは以前、借家住まいだったが、狭くてデジタルの機材を設置することができず、新社屋の建設も必要だった。いわば二重苦を背負ってのスタートになった。まずはデジタルとアナログの二つの電波を流すサイマル放送から始まったが、これも無事、切り抜けて胸をなぜ下ろした。中継所も他局と共同で建設するなどして、順調に進んだ。テレビが見えにくい難視聴地区の対策も予想以上にはかどった。

問題は受信者側だ。デジタル受信機に買い変えることが必要だが、果たしてメーカーの生産が間に合うかどうか。国の情報でも、その確証は得られなかった。さらに急増している高齢者家庭が、高いカネを出して受像機を買い変えてくれるのか。米国、韓国、イタリアなどでは、次々に切り替え時期を延期していた。日本も同じ道をたどるのではないか。しかし、杞憂に終わった。デジタル受像機の普及率は年を追うごとに伸びた。安いチューナーを設置することでデジタルも見えるということで、こちらも急増した。ということで、アナログ停波の影響も、先述したように最小限に留まったわけだ。

みんなからよく聞かれるのが「デジタルで放送局は儲かるのですか」ということだ。とんでもない。放送局の利益になる事は全くない。画面がきれいで、見やすくなったり、データ放送ができたり、双方向性になるなどの利点は多いが、いずれも視聴者サービスのためだ。それどころか、これまでのアナログ用の送信所を出来るだけ早く撤去するように求められており、そのための費用もバカにならない

ついつい文句ばかり言ってしまったが、そもそもデジタル化は電波の有効利用を図るためで、世界的に進む計画でもある。アナログ停波で空いた電波帯は緊急無線、災害対策など多様に使われる。そのためにはテレビ局が犠牲を被ってもしかたがないのかもしれない。

ところで、話は全く別のことだが、先々週の「うわごと」で、アナゴ社長のことを外来種で「有害花粉をまき散らすセイタカアワダチソウ」と呼んだが、あれは間違いだった。広報担当のヤッコダコが後書きの「ヤッちゃんのタメ口」で指摘したように、有害花粉をまき散らすのはブタクサだった。セイタカアワダチソウには、気の毒なことをした。この場を借りてお詫びしておく。

ヤッちゃんのタメ口

1カ月前の地デジ完全移行の日、オレ様は視聴者さまの対応のために電話番をしていた。オレ様の担当時間が夕方帯と言うこともあってか、思った以上に問い合わせや苦情の電話は少なかった。何より驚いたのが、地デジ対応テレビを導入していながら“アナログ放送”を見ていた人が多かったことだ。せっかく地デジ対応テレビを購入しても、地デジのきれいな映像を見ていなかった訳だ。オレ様たちテレビ局では地デジ対応テレビの購入などの対策については盛んにPRしていたが、テレビの使い方に関してはもう一つ伝えきれていなかったのではないか?そんな疑問を感じるとともに、反省した1日だった。電話対応用の部屋にはあらゆるメーカーのテレビ説明書を集めて、リモコンの中にあるデジタル表示のためのボタンについて説明する…そんなことの繰り返しだった。

会長も書いているように、デジタル機器対応のための設備投資を考えると、とんでもない負担がテレビ局にはのしかかっている。ただ、テレビの持つ可能性をいろいろと広げてくれるチャンスだと前向きにも捉えている。まあ、設備投資の負担分は会長への献上金を減らすことでなんとかなるはずだ。これまで以上に皆さんにとって楽しく・親しめる番組作りを目指していくから、KABをよろしくな!!