ボクは一度は救急車に乗ってみたかった。サイレンを鳴らしてラッシュの車列の中を走り抜けていく救急車は恰好いいではないか。昔、駆け出し記者の頃、支局が消防署の近くにあり、救急車が走りだすと、すぐ後ろをジープで追いかけていた。そのころからの念願だった。そうはいっても物見遊山や趣味で乗せてくれるはずもない。

ところが先日、思いもかけず救急車で運ばれることになった。数日前から激しい腹痛に四苦八苦し、知り合いの医院で治療してもらっていた。なんでも急性びらん性胃炎とか。いったんは回復したものの、2日後の夜にぶり返した。時間が経つにつれて痛みは激しくなり、気を失いそうになった。夜間では行きつけの医院に頼むわけにもいかない。なんとか意識のあるうちにと思い、恥を忍んで救急車を頼んでもらった。玄関先まで這いずり待っていると、やがて救急車が来た。

さて、これで救急車に乗れるぞ、なんて思いはこれっぽちもなかった。なにしろ意識は朦朧(もうろう)としている。ひたすらウンウン唸るだけ。肝心の乗心地なんて味わうどころではない。とにかく早く救急病院に着いてほしいという思いだけだ。救急病院で痛み止めの点滴を打ってもらい、やっと半分、生き返った心地になった。さて痛みの原因だが、これが病院でもよく分からないという。間接的には年末年始から連日続いた暴飲暴食ストレスが重なったことだろうが、腹部のどこに炎症があるのか分からないのだ。それからあちこち検査が続いた。病名もはっきりしないので、ボクは「飲食過多ストレス性胃腸病」と名付けることにした。

とにかく5,6日は絶食で、飲むのは水だけ。やはり日頃の節制が大事で、少しでも調子が悪ければ、早めに治療を受けることだ。といいつつ、はやく良くなって、美味い物を食べて、飲みたいという思いは募るばかり。まさに「小人、救いがたし」ということだろう。ともあれ救急車に乗る事態は絶対に避けるべきだ

これも自慢にはならないが、ボクは霊柩車で運ばれた経験もある。14,5年前だが、札幌に出張に行った。パーティーの翌朝、下半身が激痛に襲われ、身動きが取れなくなり、即入院。約10日後、車椅子に乗れるようになり、東京の病院に転院することになった。会社に羽田空港にベッド用の車を待機してもらうよう依頼した。ところがこれがどうみても黒塗りの霊柩車なのだ。ボクの乗せられたベッドは、棺桶を置くらしい場所に安置させられた。運転手の助手が「付き添いの方は遺族席にどうぞ」というのを聞いて、やはり霊柩車ということを確信した。

生前葬をすれば長生きするという言い伝え(?)がある。この伝でいくと、生きたまま霊柩車に乗ったボクは長生きするに違いない。えっ、周囲が迷惑だって。そんなこと知ったことか。ただ一方では「佳人薄命」(もちろんボクのことだ)ともいうし、果たして結果はどちらに転ぶのか。

今年初め、社内のインチキ占い師(とヤッコダコはいう)のランパツは今年のボクの運勢を「病気年」と断言した。その占いが当たったのだろうか。

ヤッちゃんのタメ口

恐るべしインチキ占い師の“ランパツ”!!散々インチキとオレ様がけなしたことが気にくわなかったのだろう。「会長入院!!」の一報を聞くなり、奴はニヤッと笑った。会長の体の心配うんぬんより自分の占いが当たったことがうれしかったんだろう。オレ様は見逃さなかった、奴が冷たく笑ったのを…(汗)

さすがの会長も“ランパツ”の占いをすっかり信じたようだ。まあ、トリックの山田奈緒子ばりに種明かしをすると、ランパツは社内の情報をまめに収集しているから、会長の乱れた私生活に関する情報もキャッチしていたらしい。そこから推測した結果を“占い”と称して会長に伝えただけだ。オレ様は、全部まるっとお見通しだ!!

それでも会長への効き目は十分で、時間を見つけては“ランパツ”の所にやって来てアドバイスを受けている。ハッ、恐るべきランパツ。これではまるで…