長い(?)人生を送っていると、時として思いもかけないことが起きる。なんとこのボクがオペラに出演することになったのだ。ボクは子供のころから音痴気味(決して純粋音痴ではない)であり、公衆の面前で歌うなど、ありえない。といって別に小中学生や高校生の演劇に出るわけではない。れっきとした市民オペラ団体の公演だ。プロやプロ並みの歌手が揃って、県立劇場の舞台で、全編、イタリア語で上演するのだ。

先日、NPO法人テアトロ・リリカ熊本の総会と懇親会が開かれ、後援会員であるボクも参加した。今年は15周年記念として、プッチーニ作曲の歌劇「トスカ」を上演するそうだ。「トスカ」といえば見せ場の多さから、オペラの代名詞的な作品だ。時代はナポレオンが欧州を席巻していたころ。ローマを舞台に展開する。歌姫のトスカと画家のカヴァラドッシの恋人同士が、政治の世界に振り回され、悪徳の警視総監の横恋慕もあって、悲惨な境遇に遭う。最後には画家は銃殺され、歌姫は後追い自殺するという悲恋を描いたものだ。ボクも以前、見たことがあり、すごく感激したことを覚えている。20世紀最大の歌手マリア・カラスが何度もトスカの役をやったことでも知られる。

主催者の古崎正敏代表の挨拶で、総会の出席者の一人に出演をお願いするので、断わらないようにという話があった。出演を頼まれた人は大変だなあ、と思いつつ、ボクは美味しい料理とワインを堪能していた。そこへ古崎代表が来られ、まずは時候の挨拶。と思っていたら「出演を」ときた。青天の霹靂とはこのことだ。仰天してワインをこぼしそうになった。同席していた弟に言わせると、ボクが出ると観客が増えるかもしれないそうだが、そんなことがありうるはずもない。

なんでも歌わなくてもいい役で、発言も一切なし。杖をついてウロウロして、威張ったふりをすればいいとか。なんのことはない。認知症気味の老人の役ではないか。ボクは断乎として断った。よく話を聞いてみると、教皇(?)役で、舞台に登場すると、出演者がひれ伏し、第一幕の締めくくりになるという。そんな大事な役がボクに務まるわけがない。ボクは重ねて丁重にお断りした。しかし、それで引き下がるような古崎代表ではない。トスカ役の浦田玲子さんはじめリリカの女性陣まで動員してきた。美人で、美声で、スタイル抜群の浦田さんに頼まれると、ボクも弱い。それでも心を鬼にして断った。

ところが、そこに悪魔のささやきが聞こえてきた。まず歌わなくてもいい。教皇の衣装はド派手で、観客の注目を集める。死出の旅路のいい思い出になるではないか。そうだ写真を撮ってもらって、葬式用にしたらどうだ。コラムのネタにも困らないぞ。こんな機会は二度とない。悪魔の誘惑は延々と続いた。ボクはつい、「考えさせてくれ」と言ってしまった。これでは魂を売ったも同然ではないか。そのことに気付いたボクは「毒を食らわば皿まで」の心境になり、出演する決心をした。

さて上演は11月10日午後6時開演で、場所は県立劇場の演劇ホールだ。間違っても見に来てもらいたくない。えっ、本心はと言われてもなあ…。そうだ入場券を精一杯、売り歩くことにしよう。

ヤッちゃんのタメ口

おっ、なんだなんだ。会長がやけににやけながらこの原稿を持って来るぞ。
えっ?読んで驚くな?書いてあることはじゃないぞ?…って、え~!!本当か!?
オペラに出演するだと!!それも県立劇場の舞台でだと!!おいおい、オペラは遊び場じゃないぞ、まったく。単なる通行人かと思ったらちゃんとした役じゃないか。

教皇?なのか?なかなかいい役だぞ。格好良さそうだ。(聖闘士星矢の中でのオレ様のイメージではあるが)まあ、日ごろから社員相手に威張りちらしているから、その手の役は得意とは思うがな。きっとお願いした方もそう思ったのだろう。当然のごとく台詞はないと思うが…(もしあるなら、オレ様が徹底的に発声を鍛えてやろう)

しかし、文中に「断った…」うんぬんと書かれているがまんざらでもなかったはずだぞ。自分の晴れ舞台を社員に見せるために、きっとチケットが社内に出回るんだろうな…もちろんベストパートナーの“コケボウ”が社内で配り回るとは思うが(汗)

怖いもの見たさの方は、良かったら当日(まだ半年近くも先だが)見に来てくれよ。詳しくはオレ様が言わなくても会長が自分で書くはずだから…