いよいよきた。以前から、KABのCMに出演しろという話は来ていた。持ち込んできたのは編成局長、部長、広報担当のヤッコダコだった。顔触れからしておかしい。ボクは直ちに断った。折角、相談役として自由を謳歌しているのに、いまさら新たな仕事をしろというのは無理だ。さらにボクはすでに過去の人間だ。いまさらCMに出ても見てくれる視聴者がいるとは思えない。CMにはアナゴ社長を出演させればいい。

ところがこれで引っ込むような輩(やから)ではない。「相談役には根強いファンが付いている」とか「新境地を切り開いて、パーッとやりましょう」とか「何のために給料を払っていると思うの」とか、グズグズ言う。最後には「社長の業務命令です」とまで言い放った。骨の髄までしゃぶり尽くしてやるという思惑がミエミエだ。ついに根負けしたボクは「いいようにしてくれ」と言ってしまった。この企画は、いずれ社長の反対で潰れるに違いないのだから。

しかし、ボクの読みは甘かった。社長が夏休みに入ったとたん、ヤッコダコたちが企画案を持ち込んできたのだ。それによるとCMは二つのパターンがあり、ひとつはボクがCMに復活したのをアピールするもの。ふたつは番組のPR編。さらに復活編には4案が付けられていた。それを見て驚いた。うちふたつはボクが暇を持て余し、自らCMに出たがっているという筋。別の二つは社長命令で出演するハメになり、悔しがったり、小躍りして喜んでいるという筋だ。

どれを選んだとしても、ボクの役はオッチョコチョイで、軽薄で、笑い者にされるだけ。重厚で、知性と教養にあふれ、円満な人格者という、ボク本来の姿はどこにもない。それどころか食いっぱぐれて都落ちしてきたコメディアン扱いではないか。視聴者に笑い者にされて、視聴率が上がるかもしれないという発想はどこから出てきたのだろう。こうなれば、一旦、受け入れた振りをして、撮影の時はボク本来の姿を見せてやろう

ボクの決意は固く、撮影に臨んだ。ところがボクの読みは甘かった。ボクの部屋に撮影クルーが8人も押し掛けてきたのだ。わずか15秒のCMになんということだ。カメラ、音声、照明、振付師(?)、監督に助監督、さらにメークさんもいる。監視役にヤッコダコまで控えている。これは集団脅迫行為だ。「はい、そこで笑って」、「髪を振り乱して叫ぶ」「もっと迫力をだして」とか、次々と指令が飛ぶ。ボクの反抗心は一瞬にして崩れ去った。8人組の言うまま、気ままだ。

場面は代わって1階ロビーへ。KABの人気キャラクター・ケービィーとの共演だそうだ。ケービィーの本番撮影中に、ボクが乱入して「ボクもCMに出してもらう」と叫ぶ。ここでも指示、命令が乱れ飛ぶ。社員たちが数人、冷やかしに集まってきた。なんとボクが演技するたびに、笑い転げているではないか。ボクの尊厳はいたく傷付けられた。この仇討はどこかでやってやる。その夜、ボクは悔しくて泥酔してしまった

放映は今月下旬からだそうだが、だれが見るものか。アナゴ社長様、笑っていないで、なんとか助けてくれー

ヤッちゃんのタメ口

この場をお借りしてはっきりと申し上げておこう。なぜ相談役のCMが復活するのか。その理由はたった1つ

「何か仕事をしろ!」この一言に尽きるからだ。

相談役が権力の座を追われてからはや数年。その好き勝手し放題の様に社員からはいろいろな相談が寄せられていた。社長様とオレ様はその扱いに日々頭を悩ませていたが、ついに1つの結論に達した。「CMに出演してもらって画面上だけでも輝いてもらおう。そうすれば満足するはずだ」との結論に。そのため社長様や局長。部長に一芝居打ってもらいCM出演をお願いするストーリーを作り上げたのだ。まあ、結果からすると本人はノリノリで出演していたから問題はないが。楽しそうに出演していたのが何よりだ。「必要ないよ」と言いながらうれしそうにメイクされたり(本当は必要ないのだが…)「もう少しこうしたらどうかな?」と俳優のように意見したりと、楽しい1日だったようだ。

楽しませるのは良いとしてあとは結果を出してもらわないといけない。今回の「復活編」をスタートに、今後KABの看板番組のPRにも出演してもらう。これだけ画面に出る機会を与えたのだから後は…飲み屋で声を掛けられニコニコするのではなく、視聴率UPと言う最終目的に尽くしてもらいたいものだ。

ちなみに「復活編」の放送は、8月27日(月)からだ。ぜひ見てやってくれ!!

メイク中

※パック付きの豪華なメイク!必要ないと思うが…

撮影中

※これらがどんな場面となってCMになるのか?
放送は8月27日からだ。絶対に見てくれよ!