寒気が厳しく、どこも冬景色で何処かに行く気もしない。先日、南阿蘇に出かけたが、道の駅に立ち寄るぐらいで、特に遊びによる場所もなさそうだ。かといって、このまま帰るのももったいない。あれこれ迷っているうちに、西原村揺ヶ池(ゆるぎがいけ)のことを思い出した。外輪山の俵山の麓にあり、俵山交流館「萌の里」と道路を挟んで反対側にある。

実は数年前、訪れたことがある。この時は池の表面に無数のゴミが浮かび、池の水も薄汚れて、濁って見えた。霊験あらたかというイメージとはほど遠い。ところが今回訪れて驚いた。池の周辺は綺麗に整備され、池の中もコバルトブルーで、コンコンと湧水が湧き出ているようだ。2台の車が停まり、ポリタンクに湧水を積み込んでいる。しばらくすると別の車も来た。汲み水の名所といった風情だ。

この池は、大正時代、足腰の病に悩まされていた村民が湧水を飲むことで全快したという言い伝えがある。それ以来、地元の人達は「お池さん」と呼んで、崇拝の対象としてきた。訪れるのも県内はもとより県外からもおり、近くには旅館もあったとか。最近では廃れたものの、数年前に比べると、復活の兆しが見えてきたのではないか。池の横の弁財天のお宮掃除が行き届きいつも誰かが参拝しているようだ。水汲みに来ていた人の話を聞くと、ここの水は長く置いていても味が変わらず身体にもいいようだという。外輪山の伏流水で、水温は常に13℃に保たれ、有益な含有物も多いとか。直径5mぐらいで比較的小さいが、深さはやはり5mあるそうだ。

この池を訪れたついでに西原村にある窯元を訪れることにした。日頃、名前も聞いたことがない小さな窯元だ。あちこち訪ね歩き、やっと探し当てた普通の民家で、ご主人は不在で、奥さんが接待してくれた。いろいろ話しているうちに窯元の裏庭湧水池があると聞き、早速、見せてもらった。直径2〜3mぐらい。深さは相当、あるようだ。不思議なことに池水の色は、全く揺ヶ池と同じだった。こちらもコンコンと湧き出ているようだ。アブラメが沢山、泳いでいる。麩を小さく砕いて投げ入れると、底から盛り上がるように集まってきた。なんでもご主人が数匹放流したのが、いつの間にか増えてきた。楽しみに餌付けをしているとか。

それにしても揺ヶ池の帰り道に同じような池に出会うとは。面白かったのは窯元の池は数年に一度、大掃除をするそうだ。いつの間にか底に泥などが溜まるので、綺麗に洗い流す必要がある。ポンプで水を吸い出し、長い脚立で底に降り、掃除をする。揺ヶ池が数年前に比べて比較にならないほど綺麗になったのも、窯元の池と同様、大掛かりな掃除をしたからに違いない。ひょっとしたら西原村にはこの2つの他にも同じような湧水池があるのではないか。そんな気もしてきた。

「たかが池ぐらいで大騒ぎするな」と叱られそうだが、そんなことはない。どちらも底が深い話だ。コラムだから「奥が深い」というべきか。やはり文才があると、単なる池の話でも実に味のある奥深い内容に化けるのだ。

S姉さんのひとこと

「揺ケ池」、近くに親戚の家があるので、小さいときから馴染みの場所です。
最近は行っていないのですが、そうですか。綺麗になりましたか。今度、ぜひ、行ってみなくては

ところで、「ひょっとしたら、西原村にはこの2つの他にも同じような湧水池があるのでは?」という説、おもしろいですね!想像するとちょっとワクワクします。顧問の文才には全く関係ないですけどね(笑)