「阿蘇の温泉に行こう」と、3人の友人から声が掛った。むくつけき野郎ばかり。色気のかけらもない。誰が行くか。と思っていたら、「君の車で、君が運転してくれないと行けない」という。要するにタクシー代わりについてこいと言う訳だ。そこまで言われると、お人好しで、気の小さいボクとしては断るに断られず、ついつい引き受けてしまった。なにせ断った後の報復が怖いからだ。

心配なのは天候だ。全国的に厳しい寒波で、東京では数十年ぶりの大雪になっている。温泉旅館に聞くと、木陰に少しの雪が残っているくらいで、何の支障もないとか。当日は寒かったものの、日差しは温かいようだ。梅の花ほぼ満開になっている。と言う訳でとりあえず出発した。まずはミルクロードへ。途中まで行くと道路の両側が残っている。上に登るほどに雪が増えてくる

道路わきには樹氷が輝いている。宝石ガラス細工を思わせる。キラキラ輝く様子に目を奪われる。両側の草原は真っ白で、北国の景色を彷彿とさせる。肝心の道路に雪はなく、快適なドライブになった。「これはついている。儲かった」とつい口元が綻んでくる。「情けは人のためならず」というが、まさにその通りだ。とりあえず色気なしには目をつぶっておこう。夕方前には阿蘇・産山の温泉旅館に到着した。早速、温泉に。時間が早かったせいか、ほとんど貸し切り状態だ。ちょうどいい湯具合で、ヌルヌルした感触もたまらない。ここでもまた「儲かった」と言う気がしてきた。夕食は田舎料理風で、結構、いける。熱燗の日本酒が体中に染みわたるようだ。お銚子があっという間に4,5本ならんだ。これまた「来てよかった」と言わざるを得ない。

翌朝、ふと窓の外を眺めると粉雪が舞っている。前日、飲み過ぎたこともあり、出発を昼過ぎに延ばしてもらった。ところが粉雪は牡丹雪に変わり、さらに吹雪状態になってきた。車の上に雪が積もり、それどころか道路も真っ白になってきた。「このままでは帰れなくなるのでは」と不安がよぎる。というわけで昼前に出発することにした。車はすでに雪だるま状態だ。恐る恐るスタートし、ノロノロ運転で進む。下りの坂道はエンジンブレーキをかける。スリップしたらどうしようもない

実はボクは初任地が東北の秋田だった。支局に四輪駆動のジープがあり、乗り回していた。というと聞こえはいいが、運転は下手で、側溝に車輪を落としたことが数回ある。スリップしてパトカーに追突したことも。この時はバンパーにかすかな傷跡が残ったぐらいで、「気を付けて」と注意されただけで放免された。運転しながら駆け出し時代のことをついつい思い出した。かなり若返った気がしてきた。

外輪山から国道57号に降りて来てからも降雪は続いていた。もしあと1時間でも出発が遅れていたら、そのまま産山に閉じ込められたかもしれない。雪国の景観を楽しみ、雪道の運転も堪能でき、この日は実に充実し、ツイた日だったような気がする。これも友人と一緒に出かけたせいか。もっとも友人たちはボクが運転している間は黙したままだった。恐らく恐怖で口が開かなかったのだろう。

S姉さんのひとこと

温泉に、おいしいお料理に、おまけにですか!なんて素敵な休日なんでしょう!!
樹氷なんて滅多にお目にかかれませんよね。
ちょっと足を延ばしただけで雪国旅行気分とは、羨ましい限りです。

寒くて、一歩も家を出ない私の方は、連日のオリンピック観戦で少々寝不足です…。
何が起こるかわからないのがオリンピックですが、選手たちが目指してきた最高の舞台で、最大限の力を発揮して、笑顔で終われますように、とテレビの前で願っています。