世間には変人というか奇人というか、常識では推し量れない人がいる。えっ「お前のことか」だって。もちろんKAB社内では、似たり寄ったりの見方をされてはいるが、決してボクのことではない。はっきり言うと、ボクは極めて正常であり、歪んだ見方しかできない社員たちの方が、おかしいのだ。例えば…、なんて言い出すとキリがないから止めておこう。

先日、行きつけの小料理屋に行った。カウンターには先客が一人いた。洒落た和服姿で、なかなか似合っている。横には、麦藁で編んだカンカン帽が置いてある。今ではほとんどお眼にかかれないものだ。多分、帽子姿もなものだろう。手には、これまためったにみられないキセル(煙管)。店の人との会話を聞いていると、なんでも父親が好きだった服装で、キセルも煙草は吸わないが、アクセサリーとして持ち歩いているとか。

だからといって服装が変わっているというわけではない。出された料理を見て、「これはシャンパンがいい」と言い出した。すぐさま高級シャンパン注文1、2杯飲んだところで、肉料理が出てくると、「赤ワインがいいなあ」とまたもや高級赤ワイン注文した。なんでも1本3万円以上。これも1,2杯で終了。そこで勘定になった。気になって見ていると5万いくら。一人前にしては、目の玉が飛び出すような金額だ。しかも「領収書はいらないよ」と言って、店を出て行った。

マスターに聞くと、今回で2回目の来店。どうも熊本の人ではないらしい。あまり根掘り葉掘り聞くのも個人情報に触れるので、聞けない。で、問題はそれからだ。シャンパンも赤ワインも、少し減っただけで、ボクの眼から見たら、ほとんど手つかずの状態で残してある。残りは「店の方でご自由に」ということらしい。意地汚い、呑み助のボクは、あろうことか「超高級ワインの味見をしたいなあ」と呟いてしまった。

気のいいマスターは「いいですよ」とグラスに多めに注いでくれた。ボクは赤ワインが好きだが、味の方はサッパリ分からない。ただ赤くて安ければいいという低級ワイン通だ。それでも口に含んだ瞬間、芳醇な香りが広がり、喉元を転がり落ちていった。貧乏人としては、こんな美味いワイン初めてだ。別にタダだから美味しいといっているわけではない。いくら舌先マヒしているからといって、美味いものは美味いのだ。1本のビンからグラス10杯程度飲めるから、今回、ボクの飲んだのはグラス1杯3千円ほどということか。いやあ我ながらさもしいなあ。

それにしても、どんな氏素性の人だろう。なんでもワインに限らず日本酒やシャンパンなどにも詳しく、相当な知性と教養の持ち主らしい。横で話を聞いていても、その片鱗はうかがえる。とはいえ、あの注文と飲み方お金の使い方は、万年金欠病のボクには、とうてい理解できない。ある意味での変人、奇人なのだろうか。いや別に批判したり、誹謗中傷しているわけではない。単にうらやましいだけだ。なんて話をしていたら、某社員が「見知らぬお客の飲み残しおねだりする方が、よほど変人だ」だって。やはりそうかなあ。帰って鏡を見たら、ボクの顔が下品に見えてきた

S姉さんのひとこと

ははぁ。世の中にはそういう方もいらっしゃるのですね。と思ったら、どうやら熊本の方ではないとか。いや、もしかしたら、熊本にもそういう方がいらっしゃるのかもしれませんが、私も一度そういう方にお目にかかってみたいものです。きっと、お金よりももっと大切にしていらっしゃるものがあるのでしょうね。
それにしても、なんて贅沢なお食事の仕方でしょうか!いや、うらやましい。しかし、マスターに「味見のおねだり」をされるとは、顧問も相当なものですよ^^;