ちょうど1週間前、皆既月食だった。3年ぶりだそうだ。次がいつになるか知らないが、ボクは果たして生きているかどうか。これは何としても見ておこうと決心した。ところが皮肉なことに、その夜は友人と旧交を温める約束をしている。今更、飲み会を延期するというわけにもいかない。ということで、飲み会を途中で抜け出して、皆既月食を見に行くことにした。

前夜、夜空を見ると、ほぼ斜め上に満月に近い月が輝いている。これなら飲み屋街でもビルの隙間から見えるに違いない。当日の午後7時過ぎ、料理屋に「ちょっと用事が出来て」と断って店の外に出た。もちろん旧友も一緒だ。ビルの合間に明るい夜空が見える。ところが月はビルに隠れて、まったく見えない。ボクはついつい焦って、右に行ったり、左に行ったり、文字通り「右往左往」したが、無駄な努力だった。

こうなれば高いビルの上にでも行くしかない。幸い、近くに市役所がある。確か最上階には料理屋もある。すでに庁舎は閉まっていて、通用口しか開いていないようだ。やはりダメか。と思ったが、念のために、レストランに通じるエレベーターを探してみた。なんとエレベーターの入り口は開いていた。最上階に上がると、すでにレストランは閉店している。人っ子一人いないが、自由に歩き回ることはできる。

窓際に行って上を眺めたが、明るい夜空だけで月は見えない。念のために東のビルの上を眺めると、ばっちり月が見えるではないか。ほぼ皆既月食に近く、月全体が赤銅色鈍く輝いている日食の場合、月の影が太陽に映るため黒くなる。ボクは月食も地球の影真っ黒に月に映ると思っていたが、大間違いだ。月食では地球の影が月を覆っても、大気の具合赤銅色になるとか。ぼんやりした月の姿は、それなりに神秘的に見える。見飽きることのない風景だ。

満喫して料理店に戻ると、ママさんが「どこに行ったのか」と、しつこく聞く。皆既月食だというと、店の若い子と一緒に飛び出していった。それから30分間、店のマスターお客完全に無視したまま。さすが常連客から「バアヤ」と呼ばれる剛直なママならではのことだ。どこの店とは、後の仕返し怖いので、言えない。なにしろ少しでもバアヤの気に食わないことを言おうものなら、肩や首筋を平手で「ビシャッ」と叩かれるぐらいだ。

話は違うが、熊本県内は今回もまた台風の直撃を免れた。事前情報では暴風雨が吹き荒れそうだった。ボクも万一を考えて、縁側の椅子や鉢物を屋内に入れ、シャッターを下ろして万全を期した。夜遅くまで起きていたが、たいした風も吹かず、小雨程度ですんだ。被害の出た地方には申し訳ないが、自然は気紛れだ。ということは警戒を怠れば、いつ直撃するかも分からないということだ。台風同様、バアヤの言動にも気を付けておこう

さて次回の皆既月食はいつになるのか。調べてみたら来年の4月4日だそうだ。あと半年。まあボクも生きて見ることはできるだろう。と思っていたら、今回は1時間前後見えたのに、次回は15分程度らしい。あちこち見える場所を探していたのでは見逃してしまう。やはり今回、見ておいてよかった。善人には必ずいいことが起きるものだ。

S姉さんのひとこと

皆既月食、私も観ました。会社のベランダから…。
残業中に、せめてそれくらいは堪能しようと、同僚数人でベランダから眺めました。
もちろん、酒も肴もなしです。出来ることなら、そこで酒盛りくらいはしたかった。なにせ、見晴らしだけは抜群ですから。

ということで、次回4月4日はぜひ、決行しましょう!
顧問は手料理持参でお願いします。善人(私たち)には、いいことが起きるんですよね?