少子化の流れが止まらないなか、熊本県では各地で定員割れが相次ぐなど、県立高校のあり方が問われています。地域に高校を残そうと、新たな模索も始まりました。
50校のうち40校が定員割れ
県立高校がいま、かつてない逆風にさらされています。年々、続く少子化により、50校のうち40校が定員割れに。これに加え、来年度からは私立高校の授業料が実質無償化されることになっていて、私立高校を志望する流れが熊本県内でも強まるとみられています。

こうしたなか、今年10月、提言書がとりまとめられ、教育長に手渡されました。去年7月に立ち上がった、「県立高校あり方検討会」によるものです。
(越猪教育長)「熊本市外の高校を中心とする定員充足率の低下や、今後の少子化の進展をはじめとした課題への対応はまったなしの状況です。熊本の将来を担う人材の育成に、一層取り組んでいきたいと思います」

熊本県内の中学校の卒業予定者は、2028年には1万6000人を下回り、さらにその後の10年間でそこから4500人減る見通しです。検討会は、地域との連携強化やグローバル人材の育成を呼びかける一方で、すべての県立高校で2034年度までに62学級程度を削減する方向性を打ち出しました。
(松下会長)「高校生がいなくなると、地域の活力がなくなってしまうかもしれない」
崇城大学の松下琢教授は、副学長としてカリキュラムの見直しなどの教育改革に携わり、
今回は検討会の会長に就任。議論を主導しました。提言をまとめるにあたり、検討会のメンバーは県内25カ所で意見交換会を開き、中学生や保護者らからのヒアリングを重ねてきました。

(松下会長)「どうしても地域に残してほしいという声ですよね。どうやって、なくさないことを前提に考えようというのが、はじめの会議の方向性ですよね」
1年間の議論のなかで「衝撃的だった」と振り返るのは、私立高校の授業料無償化です。
(松下会長)「本当に下手すると、地方の郡部の高校がなくなってしまうかもしれませんよね。移住をして家族で都市部に行くか、送り迎えをしないと、高校の教育を受けられない状況が出てしまう。それは、憲法が保障している、教育の機会均等にそれこそ反する可能性がある。この状況だからこそ、地域に高校を残していかなければならないという思いは強くなりましたね」
地域との連携を模索
地域との連携を模索し始めた学校があります。阿蘇市にある、阿蘇中央高校です。

これまで定員割れに悩んできましたが、普通科の3学級を1学級に減らしたうえで、2025年度「探究科」を新設しました。探究活動の時間を設けることで、地域課題の解決に取り組みます。
1期生となる1年生たちは、地域の人たちへのインタビューをまとめた「阿蘇の輝く大人図鑑」の製作を進めています。

カフェを営む移住者を取材している班ではー
(生徒)「神戸にいらした方なんですけど、引っ越すとなったときに、別府とかいろんなところを見たんですけど、阿蘇に来た時に、お水がおいしいし、野菜もたくさんとれるから、ここがいい、阿蘇が一番と言っていました」
今年就任した、阿蘇市の松嶋和子市長を取材している班も。初めて市長室を訪ねたそうです。
(生徒)「めっちゃドアがデカかったっす。阿蘇はお金で買えないところだから、たくさん自慢してほしいというところも印象に残りました」
生徒たちは、なぜ探究科を目指そうと思ったのでしょうか。

去年東京から引っ越してきた吉川さんに聞いてみると―
(吉川さん)「東京からまったく違う環境に引っ越してきたわけですけど、そうなったときに、阿蘇について知りたいと感じるようになって。人と話すのが苦手なタイプだったんですけど、阿蘇に引っ越してきてから、すごく自分から話せるようになったり、自信を持てるようになって、変化を感じます」
阿蘇市出身の下條さんは、料理人になるという夢に向けて進学を決めました。
(下條さん)「阿蘇のなかで店を出したくて、阿蘇のことを学べることと、食材とか地形を学んだり、料理の基本や応用を学ぶために志望しました。いつか自分の店を持って、阿蘇のまちづくりに貢献したい」
県立高校あり方検討会の松下会長は、こうした高校と地域のつながりに注目しています。
(松下会長)「15歳から18歳のあの年齢の時に、地域の人が教育に携わっていただくということですよね。非常に多感な時期に、地域とよりつながることで、子どもたちの志が育っていくのが狙いにあるわけです」
地域の学びの機会をどのように守り、広げていくか―。県立高校の挑戦は続きます。









