熊本が舞台『骨なし灯籠』 台湾の映画祭「桃園電影節2025」で上映
台湾・桃園市で開かれた「桃園電影節2025」で、熊本県山鹿市が舞台の映画「骨なし灯籠」が上映されました。
8月22日のオープニングセレモニーでは、木庭撫子監督が「熊本県の山鹿を舞台にした「骨なし灯籠」を、映画祭で初めて台湾で上映できることをうれしく思っています」とあいさつ。繁体字では『無骨燈籠』と書きますが「ホラー映画ではありません、とてもやさしい映画です。台湾の皆さんも大好きな『くまモン』もほんの少し登場します」とユーモアを交えて紹介しました。
「骨なし灯籠」は、妻を亡くし、深い喪失感を抱えた男性が、山鹿市を舞台に、伝統工芸品である山鹿灯籠との出会いや、地元の人々との触れ合いを通して再生していく物語です。
2024年3月に熊本「Denkikan」で先行上映され、21週のロングラン、観客動員数5800人を記録しました。また、トロント国際女性映画祭やチネチッタ国際映画祭、ロサンゼルス映画祭など、海外でも高く評価されています。
「桃園電影節」では、2日間上映され、木庭監督は、台湾の観客から「ありがとう」と声をかけられたそうです。
【木庭監督のコメント】
上映後、『ありがとう』と声をかけてくださった方がいました。年配の女性で、互いに言葉がわからないまま身振り手振りで短い会話をしたのですが、彼女は大切な人を亡くしていて、もう何年も前だけれど、今もどこか近くにいると思う、ありがとう、と。
これまで、いくつかの海外映画祭に出品してきましたが、日本以外のアジアは、台湾が初めてです。仏教などの宗教観や「灯籠」文化が、日本よりも色濃く根付くこの国で、『骨なし灯籠』がどんな受け止められ方をするのか、期待も不安もありました。
この映画には、小さな虫や路傍の花など、ふと見渡せばそこにある「いのち」がたくさん登場します。
大切な人を亡くした哀しみに苛まれている主人公に、顔をあげればそこにある無数の「いのち」に気づいてほしい、という意図があったのですが、台湾の皆さんはその「いのち」に敏感なのかもしれません。ちょうど、こちらでは旧暦の七夕でもあり、日本と同じ「お盆」を迎える時期。死者に思いを馳せる気持ちがより深くなっているから、なのかもしれません。
映画を観た感想は、よかったとかつまらなかったとか、良し悪しを語ることがほとんどです。「ありがとう」という言葉は、この上ない、最高の賛辞です。
今年の映画祭のテーマは「出会い」。ひとつの出会いは、縁を結んでいきます。
「映画に登場したところはぜんぶ行きたい!」という方もいらした、2025桃園電映節。次はぜひ、山鹿へいらしてください。お待ちしています。