ホーム
2025年11月18日 19:31
局長級協議も深まる“日中の溝”中国人観光客の本音は?

 18日、局長級による協議で中国側は改めて抗議、答弁の撤回を要求しました。深まる日中の溝に中国人観光客はどう感じているのか、本音を聞きました。

■すでに旅行会社などに影響も

東日本国際旅行社 于金シン副社長 「(Q.皆さんキャンセルの作業を?)そうですね。珍しいです。皆、無言です」

 「無言で作業するしかない」、そう話すのは中国人向けの旅行を手配する旅行会社です。

 中国からの団体ツアーのキャンセルが急増。17日は全体の1割だったキャンセルが、18日は7割まで跳ね上がったということです。

東日本国際旅行社 于金シン副社長 「毎日のように団体のキャンセルが続いていまして、心が痛いです。どこまで影響が広がるか見通しが立たないのが正直なところ。どうしたらいいのか本当に困っています」

■日中局長級協議「満足していない」

 笑顔での対面からおよそ3週間。日中関係が急速に冷え込んでいます。

 「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」と高市総理が国会答弁したことに端を発するこの問題。日本側は「政府の従来の見解に沿ったもの」と強調していますが、今回は「中国が台湾に武力攻撃した場合」と具体例に言及。これまでよりも踏み込んだ発言です。

 17日に北京入りした外務省の金井アジア大洋州局長は18日、中国側と協議しましたが…。

中国外務省 劉勁松アジア局長 「(Q.会談の結果に満足?)もちろん満足していない」

 中国側は“一つの中国”の原則を踏みにじる、内政干渉にあたる発言だと猛反発。

 中国国民に対して「日本では中国人に対する犯罪が多発している」として当面、渡航を自粛するよう呼び掛けています。

■中国人観光客の本音は?

 その一方で、来日している中国人は落ち着いた様子をみせています。

広東省から仕事で来日中の人 「(日本に)出発する前日に渡航自粛となり心配しましたが、日本に来ると皆さん友好的で安心しました。民間の交流を進めるべきで、政治家は自分の利益のために民間交流の雰囲気を壊すような発言をしないでほしい」

上海から旅行で来日中の人 「(Q.安全面での心配は?)心配していません。毎日外出していますが、問題ありません」

 高市総理の発言や中国政府の対応については…。

上海から旅行で来日中の人 「私たち一般人はあまり深く考えていません。何かできるわけではないので」

北京から旅行で来日中の人 「(Q.中国政府の自粛要請は知っている?)あまり関心がありません」 「(Q.高市総理の発言については?)あまり政治には関心がありません。自分が楽しく過ごせればいいと思います」

 渡航自粛を呼び掛けたことを受け、野村総研は2012年の尖閣問題と同様、訪日客が年間25%減った場合、日本の経済損失は1兆7900億円に上ると試算。中国への経済依存の一端が見える形に…。

小野田経済安保担当大臣 「何か気に入らないことがあったらすぐに経済的威圧をしてくるところに対して依存しすぎるということは、サプライチェーンリスクだけでなく様々な観光に対してもリスクではあるので、リスクの低減をそれぞれ常日頃、皆が考えながら、経済を回していけたらいいなと個人的には考えています」

■輸出業者は早くも“戦々恐々”

 事態の推移を固唾(かたず)をのんで見守っているのが、北海道の水産加工業者です。

丸ウロコ三和水産 山崎和也社長 「来年に向けてスムーズに仕事したいなとは思っていたけど、今回でまた何かあるのかなと、不安だなと」

 中国向けにホタテを輸出しているこちらの水産加工会社。おととし、中国が日本産水産物の輸入を全面禁止とした影響で、年間8億円の売り上げがゼロに…。今年6月、2年ぶりに輸入再開の方針が発表されましたが、今回、再び悪い方向に向かうのではと心配しています。

丸ウロコ三和水産 山崎和也社長 「(アメリカの)関税の問題であり、中国の問題でありというのは政府間での話というのが多いじゃないですか。海外に水産物を輸出するリスクはもうちょっと何か事前にないですか…」

 中国側は18日午後、根本的な責任は高市早苗総理にあると名指しで非難。改めてこう要求しました。

中国外務省 毛寧報道局長 「中国は日本に対し、誤った発言を撤回し、トラブルを起こすことをやめるよう要求する」