国内で唯一「内密出産」を受け入れている熊本市の慈恵病院。受け入れから3年で40人が内密出産を選択しました。
生まれた赤ちゃんは、特別養子縁組に向けた手続きが進められますが、出産後に身元を明かし、自ら育てている母親もいます。
西日本在住の優子さん(仮名)。1年半前に慈恵病院で内密出産をしました。妊娠がわかったときは、学生でした。
「元彼との子どもなんですけど、もう別れているし『そんなん知らん』みたいな感じだったんです、他人事…。おろせる期間が過ぎていたので、赤ちゃんとこのまま2人で死んじゃおうかな、って何回も考えました」
家族とほとんどコミュニケーションをとっておらず、助けをを求めることは考えられなかったと当時を振り返ります。
産後に病室で赤ちゃんと過ごすなかで、我が子への思いが募りました。

「本当にかわいくて、この子が大きくなるのを見られないのか、と思うとめちゃくちゃ寂しくて」
慈恵病院・新生児相談室の蓮田真琴室長も「朝、優子さんの目がはれていたり、ごはんに全然手を付けていなくて…。優子さんの愛情がとても大きかったので、病院に赤ちゃんを置いて帰る決断がいいのか、すごく悩みました。ご家族に話したときにどうなるか不安もありました」と話します。
優子さんの母親は「なんとなくそんな予感はしていたんです。聞いても何も言わないから、何も言えず…反省するのは、言えない雰囲気を作ってしまっていなもかな、と。いろいろ病院に話を聞いていただいて、結局、自分で育てるって決意をしてくれたのは、すごくありがたく思っています」と話します。
3年で40人が内密出産 理由は…

慈恵病院によると、内密出産を希望する理由で最も多いのが「親や家族に知られたくない」というもの。内密出産を頼る女性全員に、親からの虐待や過干渉など家族との関係性の悪さが認められたといいます。
優子さん以外にも、複数の女性が産後に子どもを引き取りました。しかし、家族の支援が得られず、子育てを続けられなくなるケースも。その場合は、子どもは乳児院などに措置されます。なかには、病院も行政も行方を把握できなくなってしまった女性もいるといいます。
慈恵病院の蓮田健院長は「いま、私たちにできることは、予期しない妊娠があったときに、母子が安全に保護されるかどうかだけ。女性の妊娠前、妊娠後まで、とても力が及ばない」と語ります。
「産んだことで、いろんなことが変わった」
現在は、実家で両親の支援を受けながら、子どもを育てている優子さん。1歳半を迎えた我が子の成長を次のように話します。

「話せるようになったとき、いろんなことができるようになったとき、産んでよかったな、かわいいなって思います」
1年半前、内密出産の後に思い直した自身の選択をどう思っているのでしょうか。
「産んだことで、いろんなことがよい方向に変わったと思います。赤ちゃん殺しちゃったりとかも、全然あった未来なので。仲良くしたいですね、仲良しの親子になりたいです」
テレメンタリー2025「内密出産のリアル」より(2025年2月1日)









