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相次ぐ企業進出、台湾タウン構想…熊本工場の開所から1年“TSMC城下町”の今

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TSMC熊本工場(熊本県菊陽町)

「イェン、次はヌェン」「これが台湾の漢字ですね」

熊本県菊陽町にある中国語教室「苓々(リンリン)」。台湾で使われている中国語、いわゆる台湾華語を学べる教室です。

台湾・新竹市出身の朱裵苓さんが教室を開いた15年前、60人ほどだった受講生は、100人を超えるまでに急増しています。かつては、中国へのビジネス出張を目的とした人が多かったそうですが、最近は『台湾について知りたい』『言葉や文化風習を知りたい』という人が増えているといいます。

語学教室「苓々」

ホテルで接客の仕事をしている女性が受講したきっかけは、熊本への転勤。「街中で困っている人を見たり、楽しんでいる人を見たりして、そういう時期に熊本に来たから勉強したいと思えた」と話します。

受講生のなかには、TSMC関連産業の従業員や不動産業者も。あらゆる面で“台湾”が身近になってきています。

171社進出 10年間で11.2兆円の経済波及効果…

2024年2月の開所式から1年。TSMC第1工場は2024年末に本格稼働し、年内には第2工場の着工を予定しています。工場が立地する菊陽町は、2025年度の固定資産税収入が55億円と、24年度から約14億円増加し、普通交付税の不交付団体となる見通しです。

また、九州フィナンシャルグループは2024年、熊本県内への進出企業が171社にのぼり、2031年までの10年間で、約11兆2000億円の経済波及効果が見込まれると発表しました。

くまもと産業復興エキスポ 2月

2月に益城町で開催された「くまもと産業復興エキスポ」。多くの半導体関連企業が集まる展示会には、首都圏を拠点とする物流大手・日新もブースを構えました。去年9月、菊陽町に隣接する大津町に土地を購入し、物流倉庫の建設を始める計画です。

狙うのは、熊本に進出する台湾企業などの倉庫や輸送の需要。日新熊本営業所の横山利幸所長は「半導体に限らず、倉庫を使っていただけるような需要があれば」と語ります。

エキスポで関心を集めていたのが「台湾企業の九州進出状況と日台企業連携の可能性」と題したセミナー。ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)傘下の福岡銀行台北駐在員事務所、才田祐介さんが事例を紹介しました。

「面白いのは、台湾で普通に弁当屋さんをやっていた方が辞めて、そこで稼いだお金を持ってきて、熊本で弁当屋をするとかですね。なんで進出するのか聞いたら、熊本で日本の教育を受けさせたいから、と熊本に来られた方もいらっしゃいました」

 FFGの熊本銀行プロジェクトチームによると、この1年で、半導体関係だけではなく、飲食、物流関係の相談が増えたといいます。台湾からの在留者をはじめ、居住者や労働者が増えていることもあり、進出企業の業種も広がってきています。

「台湾タウン」構想 3月に施設オープン

台湾企業が購入した式場

「TSMCのまわりにはサプライチェーンが集まります。台湾の新竹や台南がそうなったので、菊陽町も必ず同じになります。飲食のニーズが必ず高くなるので、弊社はここに進出しました」

そう語るのは、台湾で結婚式場やレストランを展開する御嵿(オクチョウ)グループの鄭人瑋社長。菊陽町の結婚式場を購入し、複合施設「日台会館」として3月3日に開業。まずは、宴会場としてオープンし、ゆくゆくは台湾式の高級レストランなども展開する考えです。

台湾政府は台湾企業の九州進出に補助金を出すなどサポートしているとのこと。目標は、出店する建物をさらに広げて、菊陽町一帯に「台湾タウン」を作ることだといいます。

「文化の衝突は避けられないことですが、この町の将来のために一緒に頑張りましょう。必ず素晴らしい町になるはずです」

この1年、ビジネスの分野で身近な存在となった熊本と台湾。地域の変化はまだその途中にあります。

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