所有者から譲り受けた古民家を地域活性化のために活用する「0円古民家プロジェクト」が熊本県で始まりました。
3年前に全国で始まった取り組みで、古民家を次世代へ引き継ぐため、所有者と活用希望者をマッチングします。全国でも、まだ5件ほどで、熊本県では初の試みです。

対象となったのは、熊本県湯前町にある築113年の木造住宅。広さは約30坪です。プロジェクトをすすめる全国古民家再生協会熊本県連合会の西光さんは「空き家の古民家を所有者さんから0円で譲渡して、地域の活性化につなげていく」と説明します。

このプロジェクトでは、単に住居として古民家を使うことは想定していません。「0円古民家プロジェクト自体が、元々、空き家古民家で事業を起こすことで地域の活性化と、最終的に雇用まで生み出せればいいね、というコンセプト」と西さんは説明します。
プロジェクトでは、まず興味を持った人は「必ず現地見学をする」という第一条件があります。その上で、具体的な事業計画書を提出。応募が集まった段階で、プレゼン会を開催し、所有者や湯前町職員などが各事業計画を聞きます。最終的に誰に譲渡するかは、所有者自身が決定する仕組みです。

プロジェクトの最大の特徴は、土地と建物が無償で譲渡される点。しかし、完全に“タダ”というわけではありません。
「かかるお金としては登記費用です。建物の所有権を移す登記費用は、もらわれる方に負担していただく」と西さんは話します。
また、古民家の修繕費用なども、希望者の負担となります。それでも、通常のビジネス展開に比べて初期コストを大幅に抑えられるメリットがあります。
これまでに湯前町の古民家を見学したのは7組。宿泊業や飲食業、会社の研修施設として使いたいという提案があったということです。また、半数が人吉球磨地域以外からの問い合わせだそうです。
全体の13.8%…加速する空き家問題

全国の空き家数は年々増加し、2023年には過去最多の約900万戸に達しました。総住宅数に占める空き家の割合は13.8%で、7~8軒に1軒は空き家という状況です。
今回このプロジェクトで古民家の譲渡を決めた所有者は、空き家問題の加速を危惧しています。
「親世代が80歳前後なんですよね。これから、どんどん空き家は増えていくと思います。私が目指したのは、有効活用してもらうこと。地方の過疎化の加速を少しでも食い止める手助けになればいいかな」
西さんも「113年経っている家を壊すのは簡単ですが、歴史、文化的な価値はある。その文化的価値を後世に引き継いでいくことに意義があるし、地域性や古民家の状態にあわせた活用法を考えていく」と話します。
「壊すより生かす選択を」。増え続ける空き家問題に対して、新たな活用の道を示す0円古民家プロジェクト。地域に眠る資源を掘り起こし、文化的価値を継承しながら地域活性化につなげる取り組みとして、注目されます。









