ついに長年の夢がかなった。芦北町の「うたせ船」に乗る事ができたのだ。紺碧の不知火海を純白の帆をなびかせながら滑るように走る海の貴婦人。昔から憧れだったが、なかなか乗船する機会に恵まれなかった。それがボクが所属している某団体の有志が貸し切りバスを仕立てて、出かけることになったのだ。

断わっておくが、決して観光や遊びに行ったわけではない。熊本県は農業や漁業が盛んだ。その現場を知らずして熊本県の第1次産業を語ることはできない。その視察候補として選ばれたのが「うたせ船」ということで、ボクの希望と、たまたま一致しただけだ。重ねて言うが、第1次産業の一部を体験し、見聞を広め、幅広い知識を身につけるというのが目的だ。その他のもくろみなどあろうはずがない。

とはいえ、当日は子供の頃の遠足と一緒で、朝5時過ぎには目覚めて、心がウキウキしてきた。ボクは理由もなくシャンパンワインをバッグに入れていた。なんのつもりだったのか、いまだに思い出せない。これも高齢化現象のひとつかもしれない。さて乗船し、沖合に出る。4本のマストに帆が張られる。風をはらみ、船は真横に進んでいく。底引き網も入れられた。どういうわけか料理が次々に出てくる。さあ、まずシャンパンで乾杯だ。視察の目的とは違うようだが、まあ、いいではないか。

漁師料理は凄かった。船長の奥さんの手づくりのさつま揚げにエビのかき揚げ、小ぶりのカニ、見たこともないような大きなシャコ、生きたものと塩焼きにした2種類のアカアシガニ、さらに幾種類もの刺身…。大吟醸の日本酒を持ちこんだ人もいて、コップ酒が喉をくすぐる。釣りを始めた人もいたが、ボクはひたすら飲み食いに没頭した。時折、風の音がするぐらいで、周囲は静寂そのもの。遠くに3,4隻の「うたせ船」が見える。真っ白の帆がドレスのように見える。なんとも表現しがたい優美な船型だ。向こうからこちらを見ると、同じように見えるのだろう

約二時間ぐらい経ったろうか。満腹で、心地よい酔いも身体を駆け廻る。釣りの方は船長の息子が小ぶりの太刀魚を一匹釣りあげただけで、同行者3人はボウズ。ボクは先見の明があったわけだ。なんでも太刀魚は7月ごろから釣れ出すそうだ。帆をたたむと底引き網を引き上げ始める。まだシーズンには早いというものの、期待に胸が膨らむ。網の中にはコチ、小エビ、イカ、白キスなど多彩に入っている。小ぶりの獲物が多いが、2次会の食事には十分だ。さらに帰りには一人2匹ずつの太刀魚まで土産にもらった。

そうそう視察の件だが、この世界も高齢化の波が押し寄せ、2隻が廃業したそうだ。漁獲量も温暖化のためか年々、減少傾向とか。厳しい波は「うたせ船」の世界まで及んでいる。それにしてもこの日も出港しない船が10隻以上見られた。本格的なシーズンはこれからだというが、もったいないことだ。ボクは日本中に、いや世界に誇れる観光資源だと確信している。一隻は定員12名だが、乗り合いの船もあるから、少人数でも安心だ。

ボクは機会を作ってまた行きたい。次の視察の目的は「熊本の観光資源の有効利用について」とするか。理屈は何とでも付けられる

ヤッちゃんのタメ口

本当に楽しかったんだろうな。オレ様の所に原稿を持ってくるなり「楽しかった!」を連発していつまでも居座るとは…。だいたい、第一次産業の現状を学ぶことが目的だったんじゃないのか?学んだことは、間違いなく酔いとともに船の上に置いて来ているなあの調子では…まったく(汗)

ただ、1人で楽しんだだけというのはどうも納得がいかない。かつては権力の座の頂点にいたのなら、日ごろ世話をしているKAB社員にもその楽しさを味わってもらいたいとは思わないのか?いや、きっと会長ならそう思っているはずだ。照れくさくて言い出しにくいんだろうな。ここは太っ腹なところを見せて、社員全員をうたせ船で慰労してはどうだ!!みんな海の幸は大好きだぞ。もちろんオレ様もだ!!そうと決まれば、早速うたせ船を予約しよう。会長頼んだぞ!!