熊本の女性は強い。肥後の猛女ともいう。かといって憎らしいとか、可愛げがないということではない。逆に愛すべき女性多いと思う。そのひとりが「童謡歌手」大庭照子さんだ。御年75歳にして現役。大庭さんのことは「50,60はなたれ小僧、70,80花盛り」という長生き音頭のときに取り上げたことがある。今回は熊本市の市民会館で開かれた「大庭照子 美空ひばり賛歌」というリサイタルを聞きにいった。

大庭さんは高いサンダルロングドレス姿で軽やかに踊りながら登場した。その姿だけで盛大な拍手が湧き上がる。さてご挨拶というときにハプニングが起きた。マイクから音が出ない。舞台裏から新しいマイクが届いたが、これもだめ。3本目にして正常になった。通常なら慌ててしまうところだ。ところが大庭さんは平然として「2度も3度もやり直しなんて私の人生と一緒」と笑いを振りまいた。

確かに大庭さんの人生は凄い。阿蘇に開設した日本国際童謡館が経営的に行き詰まり横浜に移転させた。そこを拠点に、莫大な借金を返しながら、日本全国どころかアメリカカナダなどでもコンサートを開いて回った。この間、ガンを宣告されたが独特の療法で抑え込んだ。3年ほど前には自宅の2階から転げ落ちて3本骨折し、4ヵ月入院したが、見事に回復し、現役に復帰した。どれ一つとっても高齢者だったら気力も挫けるところだが、大庭さんは逆にそれをバネに活力を得ている。

大庭さんとの付き合いは10年近くなる。最近はないが、3,4ヵ月に1回は飲み屋さんで会っていたし、KABにも時折、訪ねて来てくれた。大変な苦労の時期もあったはずなのに、笑顔が絶えたのを見たことがない。70歳を超えても活力に溢れ、会うたびに元気を貰ってきた

さてコンサートだが、第1部で大庭さんは13の歌を披露した。母親の思い出を語りながら歌った歌では2番と3番の歌詞を取り違えたが、こちらも慌てることなく「プロだったら、素知らぬ顔で歌い続けるけど」と言いつつ、第1部が終わる寸前に特別に歌い直して拍手を受けた。目をつぶって歌声を聴くと、20歳代とまでお世辞は言わないが、3,40歳代ぐらいの若さノビ、ハリ、ツヤを感じる。特に言っておくが「目をつぶって」という部分には特別な意味はない。単に歌声に専念して聞くと、というぐらいの意味だ。

第1部の最後に歌ったシャンソン「生きる」の歌詞を聞いていて、ボクはドキッとした。「好きなように生きた。この私だから。死の訪れなど怖くはなかった。やり残した事も沢山あるけど、やることはやった。人の倍近く」「生きている間、悔いのないように、私の仕事も整理しておこう。ろうそくの炎が燃え尽きるように、私の迎えももうすぐくるから 生きる 生きる 今になって私は生きることの尊さを知った」だって。ひょっとしてボクのことを歌ったのか。75歳大庭さんが歌っただけに、心にジンときた

死の訪れがいつになるのかは分からないが、そろそろ意識する時期になっていることは事実だ。なんて、つい殊勝なことも思う。これも後期高齢者の年齢が近付いているせいか。まあどうでもいいけど。

S姉さんのひとこと

熊本の「愛すべき女性」…。なんだ、私のことじゃなかったんですね^^;
大庭照子さんは世界活躍される童謡歌手ですが、その大庭さんが、2番と3番の歌詞を取り違えて歌い直されたお話素敵だなと思いました。きっと、歌が大好きで、そして、観客の皆さんを大切に思われてるんだろうな、などと勝手に考えてしまいました。
アクシデント、病気に怪我、いろいろなことを乗り越えてこられた大庭さんが謳いあげられる“生きることの尊さ”は、顧問でなくても胸にジンときますね。これからますますのご活躍が楽しみです。