赤ちゃんと一緒!

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2014年7月2日(水) 悲しみを乗り越えて

「赤ちゃんと一緒!」第1回の放送は、平成10年6月7日…先月でちょうど16年。17年目に突入です!
取材で出会った方々には、たくさんの喜びや元気を頂きました。
しかし、16年という長い年月の間には、胸が詰まって、苦しくて、どうしようもなくなってしまったこともありました。

一人の妊婦、Aさんのお話です。
Aさんは結婚2年目に入る頃、赤ちゃんを授かりました。
健康管理、体重管理にも十分気をつけながら、妊婦健診もきちんと受けられ、マタニティライフをエンジョイする百点満点の妊婦さん。お腹の中の赤ちゃんも順調そのものでした。
そして、出産予定日まで、あと2週間という朝。Aさんは、お腹の赤ちゃんの異変を感じました。
『動かない…』『気のせい…?』
すぐに病院へ。緊急の診察が行われました。

…赤ちゃんは、お腹の中で亡くなっていました。完全に心音は停止していて、帝王切開を行っても助からないという状況でした。
ご主人も病院に駆けつけ、これからのことが説明されました。
それは、陣痛をおこし、普通分娩で出産をするというものでした。
Aさんのご両親は「娘は、まだ苦しい思いをしなければならないのか…」と、病院へ問いかけられます。
それに対して病院からは「産後の母体の回復、そして、なるべく早い次の妊娠のためにも最善の方法です。」と説明されました。
“帝王切開”だと手術ですから、お腹の傷が回復するまで妊娠はできません。しかし、“普通分娩”だと、子宮が元に戻ったらすぐに次の妊娠が可能なのです。
私も、この悲しみを乗り越えることが出来るのは、次の“妊娠”“出産”だと、頭の中では理解できるのですが、なんて辛い出産なのでしょうか…。

Aさんは、説明を静かに受け止め、出産に臨みました。
その日の深夜…女の子でした。

出産を終えたAさんに、何と声をかけたらよいのか…言葉が見つからない私に「ちゃんと抱っこできました。出産に立ち会ったドクターから『おめでとうございます』って言ってもらえて、すごく嬉しかった…『赤ちゃんもお母さんも上手な出産でしたよ』って、赤ちゃんの存在も自分の存在も認めてもらえた、みんなと同じになれたって思えたんです。」と話してくれました。
私の想像をはるかに超えた、妊婦さんとドクターの信頼関係…。出産に対する妊婦さんの覚悟…。
とても荘厳な世界を前にして、私は赤ちゃんに「ありがとう」と言うことしかできませんでした。

その日から1年と4ヵ月経った今年の春…Aさんは、出生体重4,000グラムを超える元気な男の子を出産。
現在、『子育て真っ最中』のママです。