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半導体バブルの陰で

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TSMC周辺エリア 賃金大幅UPで人材獲得競争が激化

熊本県内で企業集積が進むなか、課題となるのは人材の確保です。激化する人材獲得競争で半導体企業以外にも影響が出始めています。
(2024年2月20日放送)

「首都圏でも多分ない」時給1800円超 半導体以外の業種も

TSMCが進出した熊本県菊陽町。周辺のエリアでは、4年前と比べ、半導体を含む業種の賃金が約4万円上がりました。

半導体関連だけではありません。

「社員食堂だと思います。時給1500円、かなり金額としては高い。ビルメンテナンス、清掃ですけれども時給が1400円。時間によっては1800円を超えまして、清掃で時給1800円を超えるというのは、首都圏でも多分ないと思います」

求人情報を扱うあつまるHDの島津繁寿執行役員も驚きを口にします。周辺では宿泊業や建設業、飲食業など、さまざまな業種で賃金の上昇が見られるそうです。

ベースアップ&「独自のカラー」で人材獲得

「TSMCの進出が報道されて以降、多くの(半導体関連)企業が熊本に進出してきている。学生の選択肢が増えて、人材獲得が難しくなっている」と語るのはオジックテクノロジーズの金森元気社長。菊陽町の隣、合志市に半導体の表面加工を行う工場を構えています。

採用選考のエントリー数に大きな変化はないものの、なかには内定を辞退する学生も。人材を確保するため、賃金のベースアップ(4~5%)に加え、希望する社員には大学院への進学補助や奨学金返済のサポートなど独自の取り組みを進めています。

「独自のカラーを出していく」戦略の一つが、新入社員にコンクールにトライしてもらう取り組み。入社4カ月で「全国めっき技術コンクール」1位に輝いた倉岡瑠希奈さんは「成功体験が自信につながって頑張りたいと思うきっかけになった」と語ります。

半導体×クルマエビ養殖

半導体関連企業としては珍しい取り組みが天草市のクルマエビの養殖池で進んでいます。

「センサーで養殖池の中の水温や溶存酸素量を見て、酸欠になっていないか、水温が保たれているかを計測しています」と話すのは、「meistier(マイスティア)」の引地迅矢さん。半導体製造装置の生産やメンテナンスを手がける益城町の会社です。

同社が構築した次世代の養殖システムで、半導体が組み込まれた機械で水質などを自動で測定し、離れた場所からでも確認することができます。ほかにも自動で餌を与える機械など養殖業者の要望の聞き取りからアイディアの立案、プログラミング、装置の開発まですべてを1社で担っています。

エンドユーザーの困りごとを解決するシステムや装置を作る。机上のシステムのプログラミングや設計だけでなく、仕事の面白さを体験して人材獲得につなげようと、全国からインターン生を受け入れています。

大分からのインターン生
「IOTを活用して、いま問題になっていることを解決していく。自分たちで考えてやるというところが面白そうだなと思った」

東京からのインターン生
「これまで経験したことのないシステム開発部門の大変や達成感を学んだ」

さらに、強化しているのが台湾からの人材の採用です。すでに37人が働いていて、TSMC進出とそれに伴う台湾からの企業進出を事業拡大につなげようと取り組んでいます。

TSMC進出をきっかけとした、労働環境の変化。あつまるHDの島津執行役員は、熊本県内の働き手不足の対策にもつながるとしています。

あつまるHD 島津執行役員
「労働条件、全国的にさほど悪くない。これから高くなっていく、熊本県内の方は外には出ず、県外からも熊本に人を入れていくというのが非常に重要になっていくかなと思います」