熊本市の慈恵病院で、「内密出産」に頼った女性は40人に上る。自らの妊娠を周囲に明かすことができない女性が、病院のみに身元を明かして出産するもので、母子ともに危険な「孤立出産」を防ぐことを目的に病院が全国で初めて取り組んでいる。しかし、法整備は進んでおらず、病院は訴訟リスクや金銭的な負担を抱えながらの運用を続けている。
内密出産には、「産んだ母親が匿名のままでは公的支援につなげられない」という指摘や、「生まれた子どもの出自を知る権利をいかにして保障するか」などの課題がある。しかし「妊娠や出産を知られたくなかった」という理由で幼い命が奪われる事件は全国で後を絶たない。
内密出産を選択した1人の女性は取材に、「誰にも頼ることができず、赤ちゃんを遺棄して捕まるつもりだった」と語った。何が女性たちを追い詰めているのか。内密出産をした後に悩んだ末、思い直し、自ら子どもを育てるという決意に至った女性もいる。
運用開始から3年、内密出産を選択した女性たちのその後はどうなったのか。新たな課題も浮かび上がる中、内密出産の現実を見つめた。
ナレーションは、ナレーター、声優の中村郁さん。発達障害(ASD/ADHD)の診断を受けたことを公表しています。「普通のことができない」生きづらさを抱えてきた人生は、内密出産を頼る女性たちと重なる部分があったといいます。
内密出産をしたお母さんはどれだけ辛く悩んだことだろうと思います。私は発達障害を抱えながら子どもを持つことで批判されたことがあります。悩むお母さんの気持ちはもちろん分かりますし、私 自身が育児放棄をされた経験もありますので、産んでもらった子どもの気持ちも分かります。内密出産で一つでも多くの命が救われて、赤ちゃんたちにはきっと「生まれてきて良かったな」って思える日が来ると信じています。
世の中には「こうするのが当たり前」、常識と思われていることがありますが、それができない人たちがいます。その人たちが助けを求められる場所は絶対に必要だと思うんです。
それぞれの人の痛み、叫び、そして深い愛情が映像から溢れていました。私はそこにそっと寄り添おうという気持ちで台本を読ませていただきました