ハンセン病問題について考える「ハンセン病市民学会」が12年ぶりに熊本で開かれ、今後の療養所のあり方などについて話し合われました。
この市民学会は2005年に熊本で設立され、ハンセン病問題を検証したり、問題解決に向けた国への提言を行ってきました。
毎年1回、全国の療養所がある地域で開かれてきましたが、今回12年ぶりに熊本で開催。合志市の菊池恵楓園で11日に開かれた分科会では、療養所に併設されている歴史資料館の今後の展望がテーマとされました。
原田寿真学芸員
「入所者の経験や歴史認識を入口に、学校教育やボランティアガイドの案内により、さまざまな歴史に触れることで、歴史の見方、社会問題への向き合い方の多様性を獲得していく。これこそが、ハンセン病問題教育に求められるあり方ではないでしょうか。そのスタート地点を実例として示したという意味で、当館の展示には一定の意味があったと思っています」
歴史資料館の原田寿真学芸員は、こう話したうえで、入所者の高齢化が進む中、予算の確保が今後の課題になると指摘しました。
ディスカッションに参加した沖縄愛楽園交流会館の辻央学芸員は、展示物の製作にあたり、地元の美大生に参加してもらった実例を紹介。関心を広める手だてとして、アートが有効になると提案しました。
また、市民学会では、ハンセン病とされた男性が殺人罪などに問われた「菊池事件」の現場を周るフィールドワークも行われました。
男性は無実を訴えながらも、事実上非公開の「特別法廷」で死刑判決を受け、その後、執行されました。
参加者は案内役の説明を聞きながら、男性が凶器を洗ったとされたため池や逮捕された現場などを周りました。
参加者
「話はよく聞いているんですけれども、やっぱり現場を見ないと分からない。道を歩きながら、かつてこういうところで悲惨な事件があったのかと、私なりに感じることができた」
菊池事件を巡っては、男性の遺族らが裁判のやり直しを求めていて、熊本地裁で審理が続けられています。