去年6月、飲酒運転の車に女性がはねられて亡くなった事故からまもなく1年。熊本市中央区の元飲食店従業員、松本岳被告(24)の初公判が19日、熊本地裁で開かれました。
検察側の冒頭陳述によると、松本被告は去年6月、熊本市中央区細工町で追突事故を起こして現場から逃走しようとし、車を時速約70キロから74キロでバックさせ車線を逆走。
約240メートル進行して急ブレーキをかけ、進路を変更した先で歩道に乗り上げ、熊本市児童相談所の職員だった横田千尋さん(当時27歳)をはねて死亡させ、一緒に歩いていた横田さんの知人に右ひざを打撲する全治およそ2週間のけがを負わせたなどとして、危険運転致死傷と酒気帯び運転の罪に問われています。
事故直前に急ブレーキをかけた経緯について検察側は「ろうばいして急制動措置を講じた」としていますが、松本被告は「自分から止まらなきゃと思ってブレーキを踏んだ」と否認。そのほかの事実関係は認めました。
この事故で亡くなった横田さんの映像が残されてます。
亡くなる1週間ほど前、生活道路での車の法定速度をテーマにしたKABの取材に対し熊本駅の近くで偶然、インタビューに答えていました。
「駅の近くなので、いろんな人が通るし、保育園とかもあったりするので、制限がかかることで意識は変わるようになるのかなと思います」
「たまに危ないなというか、ここで本当に車が止まってくれるのかなと分からないことがあるかなと思います」
「いつも決まったところを歩くので、気を付けるようにしています、ここ車来るかなと」
法改正で車の速度が制限され、ドライバーの安全運転につながることを望むという趣旨の発言をしていた横田さん。その思いもむなしく、事故の犠牲となってしまいました。
■争点は「危険運転致死傷罪」
今回の裁判で争われるのは、危険運転致死傷罪が適用されるか否かです。
適用される要件として、法律では「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」と定められています。
検察側は冒頭陳述で、車の速度だけでなく、道路状況や走行状況も踏まえて判断されるものとしたうえで「バック走行も考慮すべき」と指摘。危険運転致死傷罪が成立するとしています。
一方の弁護側は冒頭陳述で、要件として速度は明記されているものの「バック走行については一切記されていない」などと指摘。今回の事故では「危険運転致死傷罪は適用されない」と訴えています。
今も後を絶たない、飲酒運転による死亡事故。熊本県内では近年、飲酒運転による人身事故の件数は、減少傾向が続いていましたが、コロナ禍以降、増加に転じています。
熊本県内では去年、41件の事故があり、2人が死亡、49人が負傷しました。
酒気帯び運転・危険運転致死傷の2つの罪に問われた松本被告に対する判決は27日です。