熊本市の慈恵病院が設置している親が育てられない子どもを匿名でも預かる「こうのとりのゆりかご」に2024年度、14人が預けられました。2007年5月の運用開始から18年で193人が預けられたことになります。
28日、熊本市の要保護児童対策地域協議会で公表されました。
14人はいずれも生後7日未満の新生児で、うち6人は精密検査など何らかの医療行為が必要な状態でした。父母などから事後に接触があったのは11人。父母などの居住地が判明したのは、熊本県内が1人、熊本県以外の九州の県が1人で、ほか12人は不明となっています。
母親の年代は、20代が8人、10代、30代がぞれぞれ1人ずつで、4人は不明です。出産の場所は、自宅が9人、車の中が2人など、医療機関以外での孤立出産となっていて、熊本市のゆりかごまでの移動手段は、新幹線などの鉄道が7人、車が6人となっています。
預け入れた理由としては、生活困窮や世間体・戸籍、パートナーの問題が多かったということです。
慈恵病院の蓮田健院長は28日に会見を開き「自宅での出産は好ましくない。本当はゆりかごが減って、内密出産が増える方がいいと思いますが、叶わない女性たちがいる。内密出産を受け入れる医療機関が各都道府県に1ヵ所以上あった方がいいと思いますが難しいので、本当はない方がいいけれど、ゆりかごは必要だと思っている」と話しました。
慈恵病院では「こうのとりのゆりかご」と並行して、病院だけに身元を明かして出産する「内密出産」を2021年から受け入れていて、これまでのケースなどを踏まえ「緊急下の妊産婦と子どもへの対応指針」をとりまとめました。7月上旬にもホームページに掲載するとしています。
熊本市の大西一史市長は「孤立出産や出産直後の長距離移動に伴う母子の生命の危険などの課題は依然残されている。運用開始から年が経過し、こどもの出自を知る権利をどう保障するか喫緊の課題で、引き続き病院と連携を図りながら、丁寧に寄り添った対応を進めたい」とコメントを発表しました。
なお「こうのとりのゆりかご」や「内密出産」をめぐっては、熊本市と慈恵病院が共同で設置した検討会が今年3月、子どもたちの「出自を知る権利」を守るための情報収集や手続きについての報告書をまとめました。これを踏まえ、熊本市の大西市長は今月、国に内密出産制度の法整備や予期せぬ妊娠・出産で悩む人のための相談窓口の整備などを要望しています。