去年3月、熊本市の繁華街で、コンセプトカフェの店長の男が女性従業員3人を包丁で刺した事件の裁判で、懲役20年の判決が言い渡されました。
熊本市中央区の奈良公明被告(31)。殺人未遂と銃刀法違反の罪に問われ、裁判員裁判の初公判で起訴内容を認めました。
裁判では、事件の詳細が語られました。
事件が起きたのは去年3月22日午前9時13分ごろ。検察側は、奈良被告がその4時間前に「人を殺したい」などと検索し、包丁を購入したと主張しました。
その後、中央区のコンセプトカフェで、女性従業員3人に給料袋を渡して、確認させている隙に、背後に回り込み、包丁2本で合計30回以上、3人の顔や首を突き刺すなどしたと指摘しました。
裁判では、被害者3人の意見陳述も行われました。
「事件後に、包丁を持った知らない人から追いかけられたり、刺される夢を見ます」
「顔や手などに傷跡が残り、神経が損傷したことによる後遺症があり、今も治療を続けています」
検察側は「犯行前に包丁を購入し、一定の計画性がある。犯行態様は際立って執拗かつ残忍で強固な殺意に基づく犯行である」として、懲役20年を求刑しました。
一方、弁護側は「奈良被告の犯行のきっかけは、被害者3人から一斉に不満と共に「退店したい」と連絡を受けたことだったと主張。事件前の9カ月間、休みなしで働き、月の残業時間は230時間を超え、合理的な判断ができなくなっていた。殺意の強さや計画性は一時的なものである」として、懲役8年が妥当としました。
17日の判決で、中田幹人裁判長は「強固な殺意に基づく、極めて執拗かつ残忍な犯行であり、新たに包丁を購入するなど一定の計画性を有しているといえる。長時間労働による衝動性の亢進を被告人に有利な事情として酌むことは難しい。同種事案の量刑傾向の中で、最も重い部類に属するというべき」として、求刑通り、懲役20年の判決を言い渡しました。