熊本県の菊池広域連合消防本部の男性係長の自殺は、先輩職員のパワハラに原因があったとして遺族が損害賠償を求めた裁判で、熊本地裁は、およそ8370万円の支払いを命じました。
この裁判は、2020年4月、菊池広域連合消防本部の通信指令課の男性係長が、先輩職員からのパワハラを理由に自殺したとして、遺族が菊池広域連合に損害賠償を求めています。
8日の判決で、熊本地裁は、24時間勤務明けの男性の自宅での反省会と称した業務指導や、業務中に頻繁に電話し、業務知識に関するクイズに答えられないと強く叱責するなどの行為は、強度の心理的負荷を与え、業務上の指導で許容される範囲を逸脱しているとして、自殺との因果関係を認め、およそ8370万円の賠償を言い渡しました。
菊池広域連合は「司法の判断を受け止め、精査したうえで対応を考えていく」としています。
■「パワハラ」相談件数は増加
職場においてのパワーハラスメントと呼ばれる行為は、労働施策総合推進法で定義付けられています。
厚生労働省が示す指針では、同僚の前で叱責するといった精神的な攻撃や、叩いたり蹴ったりする身体的な攻撃などが該当します。
全国の窓口に寄せられている相談は、年々、増加。2024年度は7万429件と、2年前と比べておよそ2万5000件増えています。
また、2024年度、精神障害での労災支給が認定されたのは1055人で、原因で最も多かったのは「上司などからのパワハラ」だったということです。
厚生労働省は、我慢したり無視したりすると事態をさらに悪化させてしまう可能性があるとして、会社の相談担当者や信頼できる上司に相談し、それでも対応してもらえなければ、近くの総合労働相談コーナーへ連絡してほしいとしています。