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2024年12月12日 17:34
TSMC工場の内部へ②“超純水”作り出す 地下に広大な水処理システム

 世界最大手の半導体受託製造企業、台湾TSMC。機密保持の観点から徹底した情報管理が行われ、ベールに包まれています。熊本県菊陽町の工場に熊本朝日放送のカメラが入りました。

 地上4階建ての熊本第1工場。地下2階には約2万5000㎡、サッカーコート4面分の水処理のシステムがあります。半導体製造に必要な“超純水”を作り出すシステムとは?熊本の地下水を守るための仕組みとは?

田中杜旺アナウンサー
「TSMC熊本工場の工場棟です。地上4階建てとなっています、地上は主にクリーンルーム、水処理施設は地下になっています」

 TSMCの工場内は秘密保持のため簡単には立ち入ることができません。

 2024年2月の開所式で熊本県の蒲島前知事らが工場内見学をした際に、メディアが同行することはありましたが、単独取材は全国のメディアで初めてです。

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 今回撮影できたのは、注目度の高いTSMCの水処理システム。心配の声も多い地下水への影響について、TSMCがどう取り組んでいるのか探ります。

(水処理担当者)
「「地下2階はすべて我々水処理課管轄の水処理システムになっています。面積にすると大体2万5000平方メートル、サッカーコート4面分くらいのエリアを持っていて、それがすべて水処理のシステム」

 半導体製造はウエハーの洗浄などのため大量の水が必要です。担当者によると、2024年11月は地下水の使用量(汲み上げ量)が1日平均4800tとのこと。フル稼働すると8500tほどになるそうです。

 工場内には8つの汲み上げ井戸があり、常に水位を監視、一定値を下回るとポンプが自動停止する仕組みで過剰な汲み上げができないようにしているということです。

 汲み上げた地下水は、そのまま半導体製造に使うことはできません。半導体はナノレベルのゴミの付着も許さないシビアな世界、製造の工程で「混じりけなしの水」、『超純水』が大量に必要になります。

(水処理担当者)「ウエハーの回路の幅は、何ナノメートルかというこの距離を競っている。この水で直接洗うので、中に不純物が含まれいたり、イオンが含まれていると、回路の間に入り込んで 製品に異常が出てしまう。だから、本当になんにも入ってない超純水で洗浄しないと製品に影響が出てしまう。だから、めちゃくちゃきれいな水を使わないといけない」

では、どのようにし「超純水」を作り出すのか。

(水処理担当者)「こちらが一番最初に地下水を汲み上げたあとに入ってくるタンクが、こちらのろ過器と呼ばれるもの。ろ過器の中にはイメージはタンクの中に砂が入っています。古典的な水をきれいにする方法で水に含まれる濁質などを砂の力を借りて、砂でとってあげる。一番頭の大きいものをとってあげるシステムが、こちらのろ過器」

 超純水にするまでには3つの工程があり、濁質などを取り除く前処理、炭素系物質などを取り除く中段処理を施して仕上げの工程である精錬処理に移ります。

「これが最後の一番、超純水システムで重要なところ、ここから超純水をクリーンルームに送水しています。その際、水をクリーンルームに送る際に各水質に色々スペックがあるけど、それがちゃんと保証されているかこの計器で24時間、常にモニタリングしています」

 サンプリング用の超純水を見せてもらいました。50メートルプールに耳かきひとさじ分程度の不純物しか混入を許さない極めて純度の高い水です。これだけきれいな水を大量に用意するには、やはり量や質に恵まれた熊本の地下水でなければならないのでしょうか?直撃すると―

「そういうわけではありません。熊本の原水に着目すると、例えばダムの水なら一般的にTOC(全有機炭素)が高いです、地下水ならシリカが高いということになる、超純水からするとどっちも同じ不純物なんですね。なので、原水が地下水なのか、ダムの水かは重要じゃなくて、技術的には問題がない」

――竜門ダムの未利用水を半導体工場に使うのは技術的には可能?

「技術的には、どちらの水を使っても、実験などは必要だけど、システム的には技術的には可能です」

 でき上がった超純水は半導体を製造するクリーンルームに送られますが、企業秘密のため一切、撮影不可。そのクリーンルームで、ウエハーの洗浄に使われた水は、その後どうなるのでしょうか。

「クリーンルームの中は太い配管が走り回っている。ここで見えるのは10数種類になっていますが、工場全体では36種類に分けています」

 クリーンルームで使われた後の水は、科学物質などを含んだ廃水となりますが、その種類や濃度によって36種類に分けているそうです。

 さらに、36種類に分けた水をそれぞれ適切に処理することで、水を平均3.5回繰り返し使用することができるそうです。水の回収率は75%程度。

 例えば、工場で1日100リットルの水を使用する場合、25リットルは新しく汲み上げた水で、75リットルは一度以上使った水をリサイクルして使用するということになっています。

 1平方センチメートルのウエハーの洗浄に使う水は、世界の半導体企業の平均が12リットル程度ですが、TSMCの場合は5リットル程度。水を繰り返し使うことで消費量の節約につなげているとしています。

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