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2026年4月30日 06:00
水俣病公式確認から70年「解決していない67.5%」患者・被害者ら1175人アンケート

 5月1日、“公害の原点”といわれる水俣病の公式確認から70年を迎えます。熊本朝日放送と朝日新聞社、鹿児島放送、熊本学園大学水俣学研究センターは、患者や被害者らを対象に、共同でアンケートを実施し、1175人から回答を得ました。

Q水俣病は解決したと思いますか

 「水俣病は解決したと思いますか?」という問いに対しては、「解決した」3.5%にとどまり、「解決していない」が67.5%にのぼりました。

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 解決していない理由については、「まだ救済されていない被害者がいるから」「患者認定を求める人や損害賠償を求めて裁判を起こしている人がいるから」のほかに「マイクオフ問題など不適切なことが起きているから」などがあがっています。(複数回答)

まだ救済されていない被害者がいるから 655人
患者認定を求める人や、損害賠償を求めて裁判を起こしている人がいるから 538人
チッソや国、熊本県がきちんと責任を認めているとは思えないから 408人
患者や被害者への補償・救済が不十分だから 387人
マイクオフ問題など不適切なことが起きているから 281人
埋めたてた水銀ヘドロの今後の処分が不透明だから 210人
差別や偏見がまだあるから 188人
その他 38人

 「マイクオフ問題」は、2024年5月1日、当時の伊藤環境大臣と被害者団体との懇談の場で起きました。発言時間が3分を超えた団体の発言中にマイクをオフにするという環境省の対応が問題となり、後に大臣が謝罪する事態となりました。

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Q自分自身や家族がこの数年のうちにどのような経験をしましたか

 「馬鹿にされたり、悪口、陰口を言われた」が196人、「裁判したことを非難された」101人、「職場や学校でいやがらせを受けた」が40人などとなりました。(複数回答)

 公式確認から70年がたってもなお、差別や偏見が続いていることが浮き彫りとなっています。

馬鹿にされたり、悪口や陰口を言われたことがある 196人
裁判をしたことを非難された 101人
補償金や一時金をもらったことを非難された 99人
職場や学校などで嫌がらせを受けた 40人
親戚や近所、友人から付き合いを避けられた 36人
縁談に差しつかえたことがある 34人
就職を断られた 19人

Q水俣病の経験を将来に伝えるために期待すること

 「資料を保存・公開・活用する」「国、熊本県、チッソの職員が研修で学ぶ」とともに、「学校の授業で子どもたちが学ぶ」「若い世代が水俣病の経験を語り継ぐ」など若い世代への働きかけが多く見られました。

 2025年には、熊本県内の自治体の配布物や家庭教師グループの教材に誤った情報が掲載されていたことが発覚。改めて、正しい理解を広げることが求められています。

専門家「すべての人が救済される制度に」

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 公式確認70年を前に、水俣市では29日、水俣病被害について考えるシンポジウムが開かれ、今回の共同アンケートについても発表されました。

 長年、公害研究などに取り組む熊本学園大学水俣学研究センターの中地重晴センター長は結果を踏まえ「すべての人が救済されるよう制度を見直す必要があるとうかがえた。今こそ特措法の対象地域外を含めてどんな被害があるのか調べる必要性がある」と述べました。

5月1日 公式確認から70年

 「水俣病」は、チッソ水俣工場からメチル水銀を含む廃水が不知火海に排出され、汚染された魚介類を食べたことによって発症した中毒性疾患です。神経系が障がいを受け、主に手足のしびれなどの感覚障がいや運動失調、視野狭窄などの症状がみられます。妊娠中の母親の胎内で、メチル水銀の被害を受けた胎児性患者のケースもあります。なお、感染や遺伝することはありません。

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 公式確認とされる1956年5月1日は、チッソ水俣工場附属病院の病院長が、患者の発生を水俣保健所に報告した日です。最初の患者は、原因不明の激しい脳症状を訴える少女でした。

 5月1日には、毎年、水俣病の犠牲者慰霊式が行われています。70年となる今年も、水俣市のエコパーク水俣親水緑地で午後1時半から行われ、石原環境大臣らが参列する予定です。

 水俣病公式確認から70年にあたり、朝日新聞社と熊本朝日放送では、取材記者や専門家が「水俣病70年 公害の原点は今」をテーマに、健康調査をめぐる問題や歴史継承などの課題について意見を交わしました。4月30日から朝日新聞デジタルで配信予定です。

https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11018699

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