熊本から世界初の新薬を~熊大発ベンチャーの挑戦~

関連記事ARTICLE01

熊本大学が研究 希少疾患治療のカギとなる「Staple核酸」とは

次世代の薬として期待が寄せられている創薬技術があります。

悪い作用をするタンパク質ができる前の設計図、「メッセンジャーRNA」に働きかけ、そもそも悪いタンパク質を作らせないようにする「核酸医薬」と呼ばれる技術です。

この分野で、熊本大学の研究者が世界初の技術を開発しました。「Staple核酸」です。

熊本大学工学部。勝田陽介准教授の研究室で行われているのは、世界初の創薬技術の研究です。

「従来の創薬というのは数十年かかって、数百億円かかるといわれている。数百億円かけても本当に効くかどうかわからないんです」と勝田准教授。

従来の薬の開発は病気の原因となるタンパク質に着目し、複雑な構造をもつタンパク質にぴったりとはまるカギを探すような作業だと説明します。

一方、勝田准教授らが取り組むのは、次世代の医薬品として期待が寄せられている「核酸医薬」と言われる分野。新型コロナのワクチン開発でも活躍したタンパク質の設計図「メッセンジャーRNA」に狙いをつけた手法です。

病気の原因となるタンパク質が作られるためには、リボソームと呼ばれる物質がメッセンジャーRNAを読み取り、タンパク質を作り出します。このRNAを切るなどして異常なたんぱく質が作られるのを防ぎますが、目的のRNA以外の物質にも作用する「副作用」などが課題でした。

そこで、勝田准教授は、RNAの中に含まれるグアニンという物質が豊富にあると構築される特殊な構造に着目。staple核酸を用いてグアニンの距離を近づけ、この構造を人工的に作り出すことでRNAの読み取りを制御します。

世界初の技術で国際的な特許も取得。すでに一部の病気については、マウスを使った実験で、一定の成果が確認され臨床試験に向けた準備を進めています。

「タンパク質が足りないとか、不足しているとか、足りないとか多すぎるとか、そういった病気に関しては、理論上すべての物にいけるかもしれない」

「希少疾患」と呼ばれる病には世界中で6,000を超える病があり、患者の数は3億人にのぼると推定されています。

さらに、そのうち 95%の治療法が確立されていないとも言われています。実現のめどについて聞くと―
「とにかく早くだと思います。10 年とか根拠はないので、本当に1,2年で臨床試験にもっていかないとという思いを持ちながらやっています」

次世代の薬のさらにその先へ。世界の最先端を熊本大学がリードします。