
10代、20代の若者が大麻などを使用した疑いで逮捕される事案が相次いでいます。
熊本県では、今年7月、熊本市の中学生が大麻を所持した疑い、9月には女子高校生が覚醒剤使用の疑いで逮捕されました。熊本県警によると、今年9月末までに10代が12人、20代が18人と全体の83%を占めていて、検挙人数の30人は、2020年以降では最多です。

12月に入ってからも、熊本市の17歳の少年や山鹿市の15歳の少年らが大麻取締法違反の容疑で逮捕されています。
熊本県警国際・薬物銃器対策課の北原孝一次席は「SNSがない時代だと、薬物を入手するためには、密売人と直接顔を合わせてやり取りする必要があったが、秘匿性が高く匿名で入手しやすいとなると、抵抗感がなくなってくる」と指摘します。

SNS上では大麻を「ブロッコリー」、覚せい剤を「アイス」などと、隠語を使って販売しているとみられるものが多く存在。特に、大麻に関しては、ファッション感覚で「かっこいい」「海外で規制されていないので体にも悪くない」などと誤った情報による肯定的な投稿が増えているといいます。
“トー横”や“グリ下”だけでなく…地方でも
大人を頼れない若者を支援しているNPO法人「トナリビト」の代表、山下祈恵さん。熊本の繁華街で夜回りをしていますが、1年ほど前から大麻の話を耳にする機会が増えたといいます。

「私たちのところに来る若者って、いろんな背景があるんですけど、去年ぐらいから、大麻を使ったことがある、身近に大麻がある若者たちがすごく増えてきている印象があって…。反社会的勢力と関わって、大麻を使っていたという人もいれば、夜の街で仲良くなった人、友だちに紹介されて使うようになった、というのはよく聞きます」
家に居場所がなくて、繁華街に出たり、友だちと家族同然に付き合っている中で、大麻とつながってしまうケースが多い印象だと語ります。
「いろんな事情があって、風俗とかの仕事をしているなかで、セットで薬物がついてくる。関わったなかでは、圧倒的に女性が多い。幼少期のときから風俗をさせられていた女性がいたけど、彼女に関しては、正直、何歳から使っていたのか私たちも知らない。ほかには、18歳を超えて、社会の保護がなくなった後とか、高校生ぐらいの年齢も多い」
なかには「大麻使ってる子を逮捕したら、街から若者みんないなくなっちゃうよ」と発言する若者も。それが現実ではないとしても「特別な人のことではなく、自分の仲間内はやっている」という感覚が10代の若者にあることに驚いたといいます。
「なんでもない」「これ合法」「みんなやってるよ」
大麻に関しては「なんとなく気軽にトライできちゃう、そんなに悪いことじゃないみたいな気軽さが、若者たちのなかにあるのをすごく感じる」といいます。
「私たち大人が思っている以上に、想定の範疇を超えて、いまの10代、20代の子たちにとって、大麻って、ものすごく身近なものになってきているので、当たり前に周りの子がやっていて、当たり前に知ってて、情報がいくらでも入るとなると、危機感もなくなってくるし、みんなやってるから大丈夫、みたいな気持ちになりやすいと思うとハードルがすごく低い、手を出しちゃうだろうなと思います」
大麻、危険ドラッグから守るには
「誘われてもきっぱり断る勇気、とても大事ですね。1回だけなら大丈夫ということで使うこともあるかと思いますが、これは絶対ダメです」
薬物から若者を守ろうと、熊本県内の高校では、熊本県警による啓発活動が行われています。対象は、これから進学や就職をする3年生です。
「簡単な気持ちで吸って、逮捕される羽目にならないように、自分の人生をしっかりを大切にしていただきたいと思います」
この日、講演を聞いた高校生に聞いてみると「軽い気持ちで始めてしまったら、身も心もボロボロになってしまうところが薬物の怖いところだなと改めて思いました」「周りに誘われても、周りや自分を守るために断る勇気を持ち、薬物はやめていこうと思いました」という感想を語ってくれました。
一方、こうした啓発が届かない若者たちもいます。
「トナリビト」の山下さんが関わった若者のなかには「昔、大麻に手を出したことで、人生がそこから崩れていった。困りごとがあったり、居場所求めている10代の子たちが大麻に出会う前にどうにかしたい」との考えが芽生えた人もいるといいます。どうやってセーフティネットを機能させていくか。こうした声もヒントにしながら、社会におけるつながり、居場所づくりにつなげる必要がありそうです。













