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2025年12月16日 18:53
内密出産の法制化を「ルールなく…いずれ事故や事件に」院長が国会で訴え

 国会で内密出産について意見が交わされ、熊本市の慈恵病院の蓮田健院長が、参考人として法制化の必要性を訴えました。

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 16日午前9時すぎ、国会議事堂前に慈恵病院の蓮田健院長の姿がありました。

 「内密出産の現状・実情を説明して、内密出産の法制化は大事だと思う」

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 内密出産は、様々な事情を抱えた女性が病院以外に身元を明かさず出産できる仕組みで、2021年12月に慈恵病院で国内で初めて実施されました。目的は危険な孤立出産や乳児の遺棄・殺害を防ぐこと。ただ、国内には関連する法律は存在せず、当初は違法行為にあたるのか明確ではありませんでした。

 「3年以上前に内密出産のガイドラインが発出されまして、そのことで公的には認められたんですけれども」

 2022年2月には参議院の予算委員会で、蓮田院長は取り組みへの理解と制度面の整備を訴えました。

 「赤ちゃんには罪も責任もありませんので、できれば赤ちゃんの健康と幸せのために出自のこともありますが、目をつぶってお許しいただきたいと思っています」

 当時の厚労大臣は「この扱いで違法であるということはないと考えている」と答弁。国は、内密出産について、この時初めて違法行為にあたらないとの見解を示しました。

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 7カ月後には、医療機関や行政に求められる手続きを示したガイドラインが公表されました。ただ、その中で子どもの出自を知る権利などの観点から、身元を明かして出産することが「大原則」と指摘。内密出産を「推奨するものではない」として、法整備には踏み込みませんでした。

内密出産の実情は…

 蓮田院長にとって、2度目となる国会での発言の機会。予期しない妊娠を誰にも相談できない女性たちの実情、取り組みの現状について語りました。

 「どうしてこんな普通ではないことをするのかと言われるかもしれない。

 彼女たちは親との関係が悪い、発達障害や境界知能の特性を持っている人が多い。頑張れと言うよりも、彼女たちを安心させて、出産させることが大事だと思っています。

 内密出産の定義もルールもないので、病院が自分のやり方で進める、いずれ、事件や事故になるのではないかと非常に心配しています」

 東京や大阪でも同様取り組みが始まったり検討されていることに触れ、現場は費用負担の問題などさまざまな課題に直面しているとして、法整備の必要性を訴えました。

 今回、蓮田院長を招いたのは、国民民主党の伊藤孝恵議員。今後の国の姿勢について、高市総理の答弁を求めました。

伊藤議員
「石破前総理は去年12月、内密出産について政府内で検討させると明言した。高市政権についても、この考えは維持されている認識でよいか」

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高市総理
「石破前総理の答弁を踏まえて、諸外国の事例の調査研究を進めつつ、予期せぬ妊娠や子育てに悩む方々を支援するため、必要な取り組みを進めております」

 ただ、法制化の検討に向けた有識者会議等の設置について、黄川田仁志こども政策担当大臣は「予定はない」と答弁しました。

 国内初の内密出産から約4年。今後について蓮田院長は次のように話します。

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 「国会議員や官僚は世の中のエリート。その対極にある女性たちとの距離を縮めないといけない。4年間で縮まったかというと、まだ、あまり変わらないなと思っています。その距離を縮めるために実情を説明するのが私の役割。今後も説明、発信を続けたい」

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