
「検察は不起訴の理由を明らかにしていません」
日本で不起訴になる事件の割合が増えています。30年前の起訴率は約66%でしたが、年々低下し、2024年は32.6%。また、不起訴の理由については、ほとんどのケースで公表されません。

「起訴」されれば裁判が開かれますが、「不起訴」となると罪に問われず、その情報は、ほとんど明らかになりません。
熊本県では次のような事件もー

2025年9月、熊本市のクリーニング店から現金2万5000円を盗んだ疑いで30代の男が逮捕されました。翌月、熊本地検はこの男を不起訴としましたが、その9日後、男は熊本の駐車場に停められた車の中から現金16万5000円を盗んだ疑いで再び逮捕され、常習累犯窃盗の罪で起訴されました。
ある捜査関係者は「最近、不起訴の件数が多すぎる。今回の事件も起訴して罪を償わせておけば、新たな被害者は生まれなかった」と無念さをにじませました。
熊本地検の起訴率は2024年で約40%。半数以上が不起訴となっていますが、熊本地検は「個別の事案ごとに法と証拠に基づき適切に処理している」としています。
去年5月には国会でも不起訴の理由について議論になりました。このときは、法務省の森本宏刑事局長(当時)が「ケース・バイ・ケースで判断しているのが実情」と答弁しています。

熊本大学法学部の内藤大海教授(刑事訴訟法)は、「なぜ起訴したのか、不起訴にしたのかが、検察の中だけで決まってしまうので、その判断がブラックボックス化しやすくて、外部的なチェックを受けにくいという問題はある」と指摘します。

検察官が容疑者を不起訴とする「理由」としては、主に次の3種類があります。
①本人の反省などを考慮し起訴を見送る「起訴猶予」
②起訴するだけの十分な証拠がない「嫌疑不十分」
③犯人でないことが明らかな「嫌疑なし」
※ほかに告訴の取り消し、心神喪失、被疑者死亡なども
検察は、刑事訴訟法47条の「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない」この条文を理由に、ほとんどの事件で不起訴理由を明らかにしません。
当選祝いのコチョウラン、賭けゴルフ…「嫌疑不十分」

公表されるケースもあります。選挙の当選祝いとして贈られたコチョウランを熊本市内の病院などに贈ったとして公職選挙法違反に問われた事件や、賭けゴルフをした疑いで書類送検された県議を不起訴とした事件。いずれも熊本地検は「嫌疑不十分」と明らかにしました。
なぜ、これらについては理由を公表したのでしょうか。
地検は「公益性と弊害を考慮して、不起訴の理由を明らかにするのが相当と判断した」としています。
不起訴の理由を明らかにすることには、容疑者の名誉回復という一面もあります。「被疑者としては、なぜ不起訴になったか。嫌疑不十分だったんだ、あるいは嫌疑なしで不起訴になったという方が名誉的にはいいわけです」と内藤教授。「諸事情に鑑みた起訴猶予の場合は、犯人だろうという推定が働くので、あえて公表しない方が被疑者の改善更生、名誉という点ではよい」と説明します。
過去には、容疑者の了解を得ずに勤務先に不起訴理由を通知したことを「違法」と判断した判決もありました。
プライバシーへの配慮などに丁寧に対応する必要がありますが、不起訴理由の多くを明らかにしないことを疑問視する声があるなか、最高検が大きく舵を切りました。

社会的関心の高い事件などは、柔軟に不起訴理由の公表を検討するよう全国の検察庁に周知。最高検は「個別の事案ごとに判断する方針に変わりはなく、特に性犯罪など被害者の名誉やプライバシーに配慮する必要がある事案では慎重に検討すべき」だとしています。
国民からの信頼性を高めるというのが、その理由だといいます。
「くまもとLive touch」コメンテーターで元検事の渡辺絵美弁護士は「被疑者、被害者、関係者のプライバシーや名誉にも関わるので具体的に判断すべきだと思うが、具体的な検討をしているかどうかもわからず、通りいっぺんに見えてしまっていたところが問題ではないか。公表の必要性と弊害を検察庁も考えて判断してほしい。また、それを報道することが名誉棄損などにあたらないのかなど報道機関も慎重に考えてほしい」としています。
(「くまもとLive touch」1月14日放送より)













