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2026年2月5日 18:02
衆院解散で法案は廃案…水俣病の救済どうなる?公式確認70年の節目

 超短期決戦となった衆院選。問題提起する機会が失われた争点があります。

 「私たちにはもう時間がありません。過ちを繰り返さないためにも法案を成立させていただきたく強く思っています」

 去年6月、こう訴えていた水俣病不知火患者会の森正直副会長。立憲民主党など野党6会派が提出していた水俣病の新たな救済法案の成立に期待をよせていました。

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 しかし、任期を2年以上残して衆議院が解散。これに伴い、衆議院議員の定数削減法案や選択的夫婦別姓法案など与野党が提出していた74法案が廃案になりました。

 このなかには、水俣病被害者の救済法案も。いわゆる「特措法」から漏れた被害者を救済するための法案で、救済対象となる地域や年代を広げるものでした。

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 「大変がっかりしています。国会へまた申し立てして、審議入りを目指して、成立させていただきたいと思っています」

 今年、公式確認から70年となる水俣病。多くの人が患者と認定されず、救済を求めて裁判で争うなど、今なお解決には遠い状況が続いています。

 環境省は、水俣病特有の感覚障害を脳磁計などで評価する手法を開発し、不知火海沿岸での健康調査を、来年度から本格実施する計画です。

 ただ、この手法では検査に時間がかかるため「被害者の切り捨てにつながりかねない」として、被害者団体が反対。議論は平行線をたどっています。

 こうした論点について、問題提起できないか。水俣病不知火患者会などでつくる「ノーモア・ミナマタ被害者・弁護団全国連絡会議」は、これまで、国政選挙に合わせて、政党や候補者にアンケートを送り、会見を開いてきましたが―

 「急きょ解散というなかで、公示日の前日に立候補表明する議員さんもいるとか。僕らがアンケートを出してから1週間しか期限がなかった。政党のみなさんからも候補者のみなさんからも、すべてのみなさんから回答が来なかった」

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 今回、10の国政政党にアンケートを送りましたが、回答があったのは6政党。4政党からは回答がありませんでした。

 熊本県内から出馬した14人のうち、回答があったのは6人。公平性が保てないとして、アンケート結果に関する記者会見を断念しました。超短期決戦の弊害が現れたかたちです。

 不知火患者会の元島市朗事務局長は「国会議員、政党のみなさんに考えていただく非常に重要な機会だと思っていますし、この短期間で選挙を行う、そして政策を問うなんてことを言われてもね、やはり、今度の選挙の在り方というのは、果たして、国政選挙として妥当なものではなかったんではないかと私は思います」と述べました。

熊本4区の候補者の考えは

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 水俣市を含む熊本4区の候補者は、水俣病問題の解決へ、政治はどのように向き合うべきと考えているのか。アンケートの回答と、候補者への取材でまとめました。

 国民民主党の新人、上田至さんは取材に、「患者さんの高齢化が進むなか、超党派が提出した救済法案を一刻も早く成立させる必要がある」と回答しました。

 日本維新の会の元職、矢上雅義さんは、アンケートに「被害を訴える患者さん方も、相当高齢化しており、前向きに解決する最後のチャンスだ」と回答。

 参政党の新人、植田貴俊さんは、取材に、「適切に診断し救済するためにも、脳磁計などの知見に基づく科学的診断基準の確立を急ぐ」と回答。

 共産党の新人、本村久美子さんはアンケートに「被害者の高齢化が進むなか、病苦を負い、困難な人生を歩んできた被害者の救済を、これ以上遅らせることは人道上許されない」などと回答。

 自民党の前職、金子恭之さんはアンケートに「認定患者への補償給付などを確実に実施し、水俣病発生地域における『もやい直し』や医療・福祉対策、水俣病の教訓の世界への発信などに全力で取り組む」などと答えました。

衆院選と同日投開票「水俣市長選」

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 新たな地域づくりへ。水俣市では、別の論戦も繰り広げられています。

 衆院選と並行して行われている水俣市長選挙には、届け出順にいずれも無所属の、現職で3期目を目指す高岡利治さんと、新人で元市議の谷口明弘さんの2人が立候補しました。

高岡さん
「企業のみなさまがこの水俣で力をつけていただいて、繁栄していただき、そこで働く社員のみなさま、従業員のみなさまが安心して生活できる環境をつくらなければ、この水俣の発展はない。これからも水俣の発展のために、あと4年、しっかり私が礎をつくり、新たな時代に繋げていかなければならない」

 高岡さんは、子育て世代が安心して暮らせる市政を掲げ、小中学校の給食費無償化、水俣病の資料保存収蔵庫の整備を訴えます。

谷口さん
「対話しない市政には、はっきり言って信頼は生まれないと思います。あと、透明化ですね。情報を公開しないようなそんな市政には、信頼も希望も生まれません。そして、挑戦しない市政にとっては、若い人がやる気を失ってしまいます。皆様方の力を私に与えていただきたいと思います」

 谷口さんは対話型の市政を訴え、若者の起業支援や、水俣病問題の世界への発信を掲げています。

 国政にとっても、地域にとっても課題となる水俣病に、どう向き合うか。衆院選と水俣市長選は8日投開票されます。

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