国内の患者の数が5万人に満たない病は「希少疾患」と呼ばれます。世界には7000種、3億人の患者がいるとされていますが、そのほとんどに治療法がありません。
熊本大学の勝田陽介准教授らは独自技術「Staple核酸」を使い「希少疾患」の薬の開発に挑む研究者です。薬の開発は難しい世界で、成功確率は3万分の1、数百億円もの莫大な費用と10年以上の時間がかかるといわれています。勝田准教授らはベンチャー企業「StapleBio」を立ち上げ資金集めに奔走していますが「死の谷」と呼ばれる現象が立ちふさがります。
研究チームの一人、学生の長谷川結愛さんは祖母が治療法のない「多系統萎縮症」と呼ばれる希少疾患を患いました。一般的な余命は9年とされる中、勝田准教授らと出会い、祖母を治すことができる可能性を知りました。祖母を治したいと研究の道に進みますが、時間と制度の壁もあり、薬を届けることができない現実に直面します。
日本はかつて「創薬大国」とも呼ばれる新薬創出国でした。しかし、新型コロナのワクチン開発などでも海外に後れを取り、貿易収支は毎年数兆円の赤字です。この状況を打開しようと去年、政府が動きました。日本の創薬力を向上させ、世界に貢献できる「創薬の地」とすべく強力な施策を打ち出すと宣言しました。国を挙げた取り組みに一時は機運が高まったかのように見えましたが…。
「死の谷」に挑む研究者たちを通して「新薬」をめぐる激動の時代を見つめます。
2025年6月14日(土) あさ5時20分 放送