
5人に1人が、75歳以上の後期高齢者となった日本。いま高齢者施設などで「介護美容」の需要が高まっています。
「赤もきれい」「かわいいよ」
高齢者にネイルやメイクを施し、心を豊かにする「介護美容」。
「いい顔よ 笑顔がいいですもん 笑顔が」
熊本県内の施設や個人宅を訪問し、高齢者を対象にメイクやネイルなどの「介護美容」を手がける出本麻奈美さん。この日は、、月に2回ほど訪れる熊本市の半日型デイサービスの事業所で、希望する84歳から94歳までの8人にネイルケアを施しました。

「90往復が理想です。手の筋力訓練にもなりますので」
出本さんが、すべてのケアをやるのではなく、自分でできることはやってもらうことも大切にしています。
思い思いの色に塗り上げた参加者たち―
「何色がいいですかね?この手に似合う色って何かあります?私ね、塗ったことがないんですよ」
人生で初めてネイルを体験した80代のひろこさん。出本さんは、ピンクのマニキュアを選びました。

「お父さんは関心がないから、きょうはお嫁さんに『いかが?』って、息子にも」
初めてのマニキュアを経験したひろこさん、うれしそうです。
「介護美容」は、ネイルやメイクで単に美しく整えるだけではありません。利用者同士の会話のきっかけを作り、認知症予防につなげ、心身のケアをサポートするなど生活の質を高める役割も担っています。
施設の塚本裕紀子代表も「笑顔が増えるのは、見ていて感じます。まずは体を起こす前に、気持ちを起こすところに注目していて、気持ちを起こすきっかけ作りとして介護美容を取り入れている」と話しています。
需要高まる「介護美容」
首都圏で「介護美容」サービスを展開する企業では、利用者がここ4年間で8.5倍に増えるなど需要は高まっています。
「かわいいよね」
「とても似合っている」
言語聴覚士としても働く出本さんは、3年前に介護美容の会社スマイルライフを立ち上げました。
「年を取ると、誰かに褒められたりする機会って、ちょっとずつ減っていくと思うんですけど、介護美容はサポートがあればずっとできる。きれいになった先に誰かに見せたいとか、何て言われるかなとか、そういうのがすごくいいなって思います」
別の日、出本さんは熊本市西区の特別養護老人ホームを訪れました。
「きょうは化粧水と顔のマッサージして、眉毛と口紅を入れようかなと」
入所者の多くは、日ごろ、部屋にこもりがち。部屋の外に出るきっかけになってほしいと施設から依頼がありました。
5年以上、メイクをしていないというつねみさんは、久しぶりのメイク。

「普段化粧水はしますか?」「一応つけているけど」
フェイスマッサージをし、眉毛を整え、口紅を塗っていきます。
「おおー!モデルさんみたい」
最初は不安げな様子でしたが、メイク前より表情が明るくなったつねみさん。ほかの入所者たちからもー

「おばあちゃんじゃなくて、おばさまよ」
「きれいになった」
「早速、口紅に買いに行かないといけない」
スマイルライフの出本さんも「部屋から出てきて、他の方と交流が生まれたり、美容を通して『きれいね』って褒め合ったり、持続するんですよね活動性を上げるツールになっている」と話します。
「介護美容」はきれいになるだけなく、自分らしく生きるためのきっかけ作りになっています













