社会問題となっている日本のインフラ老朽化。特に上下水道の老朽化は深刻で、道路の陥没まで各地で引き起こしています。このインフラ問題を解決するかもしれないと期待されているのが、石川県珠洲市が今週発表した『水道に頼らない全く新しい“水インフラ”』です。震災以降、断水に苦しんだ被災地が挑むこのインフラは、日本の未来を救うかもしれません。
■断水続く地域…帰ってきた“水”
震災の復旧が今も続く石川県珠洲市。その中心部から少し離れると、今も住民が避難し、崩れたままの道が残されています。さらに、この地域では、いまだに水道が復旧していません。
そんな中、2年ぶりにこの地に戻ってきた夫婦がいます。断水が続く家で、なぜ暮らし始めることができたのでしょうか。
被災で断水した住民 「お湯出てます」
断水しているのに蛇口から出てくる水。それを可能にしたのが、家の外にある“白い箱”、家庭用水循環システム『WOTA Unit』です。その仕組みはまず、屋根から回収された雨水が、この箱に送られます。そこで生物処理、フィルターによる膜処理、殺菌などをすることによって、人が飲めるレベルまで水をきれいにします。そして、使った水は再びユニットを通して浄化。繰り返し使うことができる世界初の技術です。
被災で断水した住民 「地震起きた直後の家の周りを見ると、皆そう思ったと思いますよ。こんな所もうダメだって」 「画期的というか、本当に救いの手」
■“世界初の水インフラ”が築く絆
水を繰り返し使う技術。それは震災が起きた2年前も、断水に苦しむ被災者を救っていました。能登全域に設置された仮設のシャワー。
シャワーを浴びた住民 「さっぱりしました」 「間違いなく、生まれてきた中で1番最高のシャワーでした」
各地の避難所に100台ものシャワーを設置するために動いたのが、水処理のスタートアップ『WOTA』代表・前田瑶介さん(33)です。
シャワー運営に協力した 綱島美和さん 「心から『何かできることないですか』って来た感じはすごく分かったので。本当に感謝しかないです」
その思いは市も同じでした。
石川・珠洲市 金田直之副市長 「(前田さんが)ひげぼうぼうの状態で会ったことは何度もあるので。本当に頭が下がる。復興に向けたパートナーですよ」
■水道インフラ維持の“限界”どう挑む
復興が進む中、珠洲市が新たに直面したのが、山間部における水道管の復旧コストの問題です。水道管を整備するには、一般的に1キロあたり1~2億円以上の費用がかかると言われています。数キロに及んで家が点在している過疎地域では、1軒あたりのコストが都市の数十倍とも。そこで珠洲市とWOTAが今週、発表したのが“分散型”と呼ばれる新たな水道インフラの形です。
WOTA 前田瑶介CEO 「分散型というソリューション(解決策)が、役割分担を新しい時代に向けてかなえる可能性がある」
日本の水道は戦後から半世紀以上、浄水場から長い管を通して街全体に水を送る“集約型”でした。それに対し、WOTAのユニットを用いた“分散型”とは、水道管を使わず、各家庭で使った水をその場で循環させるシステムのこと。集約型だけでなく、効率的に分散型を組み合わせて使うことで、限られた予算で持続性を保とうという試みです。
石川・珠洲市 金田直之副市長 「新しい技術に尻込みすることなく、色んなチャレンジはするスタンスで、今回の事業も捉えています」
今回の取り組みは、国が費用を支援する実証事業でもあります。全国で問題となっている上下水道の老朽化。今後30年間で30兆円を超えると言われる更新費用の軽減も期待されています。
WOTA 前田瑶介CEO (Q.インフラを替えることに躊躇(ちゅうちょ)はなかったか) 「どういうふうにそもそも(住民が)暮らしていきたいか。これだけ美しい暮らしがいっぱいある場所なので、住む人たちの意思が1番大事じゃないかと」
この実証事業により7世帯が、かつて住んでいた場所で暮らし始めようとしています。一足早く、自宅に戻った夫婦は。
被災で断水した夫婦 「久々に来たら、こんなに奇麗だったんだって」 「年に数回でも家族が集まることはあると思う。家がないと集まるのも難しいでしょうから、とりあえずは良かったかなと。水も出るし」
コストという経済的な理由で故郷を諦めなければならない。人口減少が進む日本が抱える現実を、前田さんは変えようとしています。
WOTA 前田瑶介CEO (Q.人口減少が進む日本社会で、どのような水道のあり方を目指すか) 「人間社会の目的って、私は文化にあると思っている。珠洲市でも一人ひとりの方に、先祖から引き継いだ家に住み続けたい思いがあるように、その文化的な目的を経済の制約条件で選べない、実現できないっていう状態をなるべく減らしていく。水が途絶えないような仕組みを作ることで、その土地らしさ、その場所らしさが実現される。人口問題の適応における1つのゴール」









