
7月28日の熊本地震から1カ月。政府は「九州応援割」など観光業の支援策についても打ち出しています。一方で、震度6強を観測した八代市の温泉街は、壊滅的な被害を受け、営業再開の見通しが立たないところが多くあります。
「最初は、あきらめたというか、もう無理かなって…」
そう語るのは、八代市の日奈久温泉旅館組合長の松本啓佑さん。日奈久温泉は、開湯から600年以上、熊本で最も古い歴史を誇ります。

今回の地震で、旅館や土産物店など多くの建物が被害を受けました。創業140年の柳屋旅館は、本館が倒壊。膨大な再建費用を前に、廃業も視野に入れているといいます。
松本さんが経営する金波楼も塀や門が損壊しました。国の登録有形文化財に指定されている日奈久を代表する建造物。明治時代に建てられた木造3階建て館内は、壁の至る所にひびが走り、剥げ落ちた土壁が床に散乱しています。今は、応急処置として耐震補強用のワイヤーで固定しているといいます。

10年前の地震の際、修繕費用は1億数千万円にのぼりました。その半分の返済を終えたところで、今回の地震が直撃。被害額は、5億円以上とみられます。

今後について松本さんは「今のところまったく分からない。文化財だからといって、特別な支援があるかというと、今まではなかったので、補助金を活用しながら自分たちで対応するしかない」と話します。
復旧には最低でも1年はかかる見通しで、その間の運転資金も必要となります。

「今までつないできてもらった歴史もありますし、先代からの思いもある。日奈久になくてはならない建物だと言われているので、残したい、元に戻したいという気持ちが強いです」
何とか復旧したいと、松本さんは、クラウドファンディングの準備を進めています。
温泉街の「生命線」が断たれた
深刻なのは、建物の損壊だけではありません。温泉街の生命線である源泉が、壊滅的な被害を受けました。
日奈久温泉の旅館やホテルは、配湯所を通じて温泉の分配を受けています。しかし、その配湯所のタンクや配管が損傷し、温泉の供給が途絶えました。現在、温泉街の13軒ある旅館のうち11軒が休業中です。

「そもそも泉源も被害を受けてるし、配管も被害を受けてるし、復旧にどれくらい日数がかかるのか、めどがまったく立ちません」
そう語るのは、公衆浴場「松の湯」の松本和子さん。明治時代の建物を引き継いだ昔ながらの浴場も損壊しました。
「温泉あっての日奈久。どういうふうに復興していくかが一番の課題」
日奈久のために
絶望的な状況の中、温泉街で営業を再開した店があります。創業105年の片山蒲鉾店。建物と機械は倒壊を免れました。断水が解消した後、地震から2週間で店を開けました。

8月の売り上げは前年を大きく下回っているといいますが、それでも店を開ける理由を、店主の片山新一郎さんは語ります。

「うちが作って販売しよるという行動で、『日奈久は動き出しよるな』って伝われば、日奈久のためにはなるかな」
日奈久の復興へ。
源泉復旧のめどは立っておらず、旅館の再開時期も見通せませんが、金波楼の松本さんも、町全体で取り組でいく覚悟を口にします。
「日奈久全体が復活、復興しないと、お客様が来てもらえない。一致団結して復興に向けて走り出すべき分岐点に来てるんじゃないか」













