
飲酒運転で女性をはね死亡させたなどとして、一審で懲役12年の判決を受けた男の控訴審判決で、福岡高裁は一審判決を支持し、被告の控訴を棄却しました。
この裁判は去年6月、熊本市中央区の元飲食店従業員、松本岳被告(25)が酒を飲んだ状態で車を時速約70キロから74キロでバックさせるなどし、熊本市の児童相談所職員、横田千尋さん(当時27歳)をはねて死亡させ、横田さんの知人にもけがをさせた危険運転致死傷と酒気帯び運転の罪に問われています。

裁判では、時速70キロ以上のバック走行が危険運転致死傷罪の要件に当てはまるかが争点となりました。法律の条文では「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」と定められています。
検察側は、一審で、道路や走行の状況も踏まえ判断されるものとし「バック走行も考慮すべき」と指摘。一方、弁護側は要件として速度は明記されているものの、バック走行については記されていないなどと主張していました。熊本地裁は今年5月「制御することが困難な高速度と認められる」として、危険運転致死傷罪の適用を認め、検察側の求刑通り懲役12年の判決を言い渡していました。
これに対し、松本被告は判決を不服として控訴。控訴審で再び危険運転にあたるかが争われました。
弁護側は、時速70キロのバック走行について「操縦不能になっていたわけではない」「ハンドルを右に切りすぎたために起きた事故で危険運転にはあたらない」などと主張。これに対し、検察側は控訴の棄却を求めていました。

福岡高裁は22日の控訴審判決で「ハンドルを右に切る前に制御することが困難な状態になっていた」などとして、危険運転致死傷罪の適用を認めた一審判決を支持し、控訴を棄却しました。

判決を受けて、被害者遺族の弁護士は「今回の判決に関して、正当な判決だと認識しています」と話しました。また、遺族は「今回の判決で、私たち遺族は一つの区切りをつけ、前を向いてこれからも様々な感情と戦いながら千尋の分まで生きていこうと思います」とコメントしています。
一方、松本被告は上告について「弁護士と相談して決めたい」と話しているということです。












