ホーム
2026年3月28日 11:00
「警察沙汰になっていたかも」内密出産を選んだ理由…親との関係性、経済的事情 費用負担どう考える

 様々な事情を抱えた女性が病院以外には身元を明かさずに出産できる「内密出産」。熊本市の慈恵病院では、4年で60例を受け入れました。

 「もしかしたら 住んでいる家で産んでしまっていたかもしれないですし、赤ちゃんが生まれないようにする、警察沙汰になるようなことになっていたかもしれないと思います」

 そう語るのは、慈恵病院で内密出産をした西日本在住の学生。おなかに痛みを感じ、地元の病院を受診した際、妊娠8カ月と判明しました。

 「生理不順だったから(妊娠に)気付けなくて、病院に行って『妊娠しています』って…まずどうしようっていう感じ」

 すぐ親を呼んで、電話して連れてきてください」と言われましたが、家族に相談することはできませんでした。

 「お父さんがどういう感じで来るか分からなかったし、怖かった。家の物を投げて来たりとか…。ヒートアップしたら、どうなるか分からないので」

 子どもの父親は交際相手の男性。経済的な事情などもあり、2人で話し合った末の結論が、内密出産でした。

camera icon

「生まれた瞬間は、本当に自分の中にいたんだという感じ。めっちゃ泣いていたので、ちゃんと生まれて良かったと」

 ただ、女性は産んだ我が子を直視したり、抱っこしたりすることができなかったといいます。『自分で育てたい』と心が揺らいでしまうことを恐れたからです。

camera icon

 それでも―

 「会わないのも後悔しそうだと思って、やっぱり会ったら寂しい。いろいろと申し訳ない気持ち。育ててあげたいと思いましたけど、無理だから…離れるの嫌だなって思ったりしています」

 出産後しばらくして、会うことができました。

 「会ってよかった。いっぱい人に愛されてほしいなと思います」

 赤ちゃんが寂しい思いをすることがないように。新生児室では、孤立した女性たちを支援する病院の相談員が時間を見つけては、母親の代わりに抱っこをしたり、おむつを替えたりと世話をするようにしてきました。

「ちょっと抱っこしますよ。おはよう。目が覚めましたか」

 新しい養育先への移管を間近に控えたこの日は、病院内をまわり、関わった職員たちと一緒に写真を撮りました。

「はいチーズ」

 将来、自分もほかの赤ちゃんたちと同じように大切にされていたんだと感じてほしいと願っています。

 赤ちゃんは特別養子縁組を前提に、里親の元へ。ベビードレスで撮影した写真も、あわせて託されました。

camera icon

 慈恵病院によると、内密出産を選択した60人全員に親から虐待や過干渉を受けるなど家族との関係性の悪さが見られたといいます。内密出産を希望する第一の理由として「親や家族に知られたくない」と話したのが53人。ほかにも、様々な事情があります。

「内密出産」費用負担は…

camera icon

 「普通に産めたとしても80万円くらいはかかる。帝王切開になったら100万円程度も考えていかないとだめですよと言われて」

 こう話す女性は当初、慈恵病院以外の病院で内密出産をすることを検討していました。去年3月、内密出産の導入すると表明した東京の賛育会病院に、足を運んで話を聞きましたが「どうしようという思いのまま帰った」といいます。

 内密出産の費用について、慈恵病院は無料、賛育会病院は原則有料となっています。

 慈恵病院の蓮田健院長は「内密出産は孤立出産を防ぐための取り組み。無料で女性を受け入れるべき」と訴えます。ただ、国内では、内密出産に関する法律は存在しておらず、取り組む病院は費用についてのハードルに直面することとなります。

camera icon

 慈恵病院で内密出産をした女性の家庭環境や経済状況について分析を進めている目白大学の姜恩和教授。分析を終えた40事例のうち、85%で女性は経済的な事情を抱えていたことがわかったといいます。

 「内密出産を必要とする人が、今後、劇的に減るとか、そういうニーズがなくなるとはあまり思っていない」

 内密出産が有料であれば、妊娠葛藤相談の入口の部分でつまずいてしまうことになりかねないとして、公費が活用できるよう、制度化に向けた議論を加速する必要があると指摘しています。

「妊娠期支援全体を強化しながら、それでもなお、という方のために最後の砦として枠組みをつくることは必要だと思います」 

この記事の写真を見る