「敵の基地を攻撃する能力がある長射程ミサイルの配備先は熊本市の健軍駐屯地である」との報道を受け、4日、陸上自衛隊西部方面総監の着任会見で、ミサイルに関する質問が相次ぎました。
西部方面総監
「もし配備されれば、しっかりと運用できる体制を構築せねばなりませんし、住民の方々への寄り添った対応というのも必要になってくると思います」
陸上自衛隊西部方面隊総監に着任した鳥海誠司陸将は、長射程ミサイルの配備先は検討中としながらも、その重要性と住民に理解を得る必要性を強調しました。
質問が相次いだ「ミサイル」とは「12式地対艦誘導弾能力向上型」と呼ばれるもの。国が開発を進め、総事業費は、当初の予定で999億円です。
「反撃能力を有する」点が特徴で、運用によっては「専守防衛」の原則に反するおそれがあるという専門家の指摘もあります。
中谷防衛大臣は今年6月「地上発射型の12式地対艦誘導弾能力向上型につきましては、今年度から配備をすることとしておりますが、具体的な配備先については、引き続き検討中でありまして、まだ決まっておりません」と述べています。
「健軍駐屯地への長射程ミサイル配備」という報道について中谷防衛大臣は、明言をせず「引き続き検討中」としました。
今年度は、残り8カ月。この期間に、配備先を決定し、地域住民への説明などは可能なのでしょうか。
熊本県は、県民が不安にならないよう国に対応を求める立場を取っています。
木村知事
「新しい動きがある際は、しっかりと国の方から地元に対して説明をしていただきたいと思っています」
熊本への配備の報道を受けて4日、市民団体が計画撤回を求める集会を開きました。
市民団体
「憲法9条のもとでこんなことが許されていいわけがないのです」
健軍地区の住民
「自分が生まれたところに異様なミサイル配備って、どう考えてもおかしいですよね」
甲佐町の住民
「こういった配備というのは非常に怒りを感じますよね。止めてほしいという思いで参加しました」
地元の商店街でも、不安の声があがっています。
住民
「戦争だけは怖いので避けてほしい」
「寝耳に水、何もそんな話なかったので突然言われても」
「ここに(ミサイル)あるから狙われる可能性もあるので怖い」
「本当に必要であれば置いてほしい」
「今の世の中なので守れる力は持っていてもらいたい」
地元商店街組合の理事長を務める井川さんは、自衛隊と共に歩んだ地域の歴史もあることから複雑な思いがあります。
井川理事長
「以前から自衛隊さんと一緒に商売もさせていただいたところもありますし、震災のときでもいろいろバタバタする地域でもあったので。状況としてはあまり好ましくないというか、反対していくというか、本当だったら置かないでほしいというのが基本だと思います」
住民の反対の声が高まれば、かつての秋田や山口のように「地上配備型迎撃システム」の配備が中止になった例もあります。
日米安保に詳しい沖縄国際大学の前泊教授も住民が意思表示する重要性を説きます。
前泊教授
「みなさん自分たちが戦場にならないという誤った認識を持っている。中国の駐日中国大使がストレートに言ったが、台湾有事それは日本有事で、日本有事になれば日本中が火だるまになると、そういう発言もしている。
ウクライナに最初にロシアが攻撃を仕掛けたのはどこかというと、ウクライナの軍事基地に全てミサイルを発射している。
戦争を80年前に経験してきたにも関わらず、軍事力の強化に対して、あまりにも無頓着に容認する動きは、非常に危険なことではないかと思っています。
県民投票してでも、意思表示をする政党支持に関係なく、住民レベルのワンイシューとして意思表示をしておく必要がある」