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2026年4月18日 11:00
「災害関連死をなくしたい」急がれる避難環境の改善 熊本地震から10年

 地震や津波による直接死とは異なり、避難生活の長期化による身体的負担や持病の悪化などで死亡に至る「災害関連死」。2016年の熊本地震では、犠牲者278人のうち、8割が「災害関連死」で、避難や被災者支援のあり方について大きな課題を投げかけました。熊本地震から10年がたっても、なくならない現実があります。

「自分事として捉えて」遺族の訴え

 「災害関連死は、過去の出来事ではなく、これからの災害医療において向き合うべき課題だと考えています」

 熊本県合志市の宮﨑さくらさん。熊本地震で、娘の花梨ちゃん(当時4歳)を亡くしました。

 「あした、頑張るよ。退院したら、一緒に遊ぼうね。おもちゃでいっぱい遊ぼうね」

 心臓の手術を前に、そう語っていた花梨ちゃん。術後の経過が思わしくなく、熊本市東区の市民病院のICUに入院していたときに、熊本地震が起きました。病院は損壊し、倒壊の危険があったため、やむなく、福岡へ転院。その後、亡くなりました。

 亡くなって4カ月後に「災害関連死」に認定されています。

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 「花梨がどうやったら生きていたかを考えてもらうことが、次に同じような子を助ける道になるという思いで発信しています」

 2年前には任意団体「災害関連死を考える会」を立ち上げ、被災直後の混乱から、花梨さんの死、当時抱いた思いなどを発信してきました。会には、全国の災害関連死の遺族も多く参加しています。

 さらに、若手の医師や看護を学ぶ学生などを対象に講話を行い、災害時のシミュレーションなどに取り組んできました。「KARIN project」として3年前に始めた防災教育活動で、これまで受講したのは約920人。その中から災害派遣医療チーム=DMATの一員となった人もいます。

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 「災害を他人事ではなく、自分事として捉えることにつなげています。娘の経験から得た災害関連死という学びを、悲しみにとどまらせず、防災意識の向上と災害関連死を減らす担い手の育成につなげていく、これが本活動の意味です」

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 今年3月、新潟で開かれた「日本災害医学会」でも、プロジェクトのことを発表しました。10月には鳥取で開かれる「ぼうさいこくたい」でも、発信する予定です。

 「いずれ、花梨のところに行った時に『頑張ったね』って言ってもらえるように過ごしていくのは家族で約束してることですから。一つそれに近づけたかなという思いはあります。熊本地震を知らない子どもたちもたくさん出てきますし、私のような思いをする方が出ないように、今後、広げていきたいと思っています」

「災害関連死」なくすには

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 「雑魚寝していて、皆がギュッとたくさんいて、足の踏み場もない体育館とかたくさんありましたから。内因性死亡で、色々な臓器がやられて亡くなった方が多いこと、それが持病の悪化、潜在性の疾患が出てしまった。それからエコノミークラス症候群、肺炎…」

 熊本地震直後の避難所の環境に、関連死を招いた原因があったと指摘する新潟大学の榛沢和彦特任教授。長年、全国の被災地で健診や調査を続けています。

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 「情けない話、東日本大震災があって、熊本地震があって、それで能登半島地震なのに、環境的には、おそらく熊本地震よりも悪かったと思います」

 2024年の能登半島地震では、石川、新潟、富山県で関連死に認定された人は、約500人にのぼります。

 「食事、ベッド、空気環境、温度…いろいろなことが重なって決まってくることなので、何をすればよい、というよりも全体の底上げをしないとダメ。48時間~72時間以内に環境整備する。迅速に準備して、全体の生活レベルを上げることが、災害関連病、災害関連死の防止に重要と思います」

 熊本地震の後、避難所へのダンボールベッドの準備や車中泊の受け入れを想定したガイドラインの策定など、各自治体で避難環境の改善が進んでいます。一方で、政府は、南海トラフ地震で最大5万2000人、首都直下地震で4万1000人の関連死が想定されるとしている現状があり、早急な対策が求められています。

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