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2026年5月9日 11:00
被災地に心寄せ続け…世界的指揮者 佐渡裕さん 地震10年の節目に熊本で公演
佐渡裕さん
佐渡裕さん

 熊本地震の発生直後から熊本を訪れ、演奏会や子どもたちへの音楽指導などを通して、心を寄せてきた世界的指揮者の佐渡裕さんが、5月31日に熊本でタクトを振ります。熊本地震から10年、佐渡さんが被災地での活動を続ける理由、熊本への思いを語りました。

「熊本が大好き」震災前から続く特別な縁

 今回、2年ぶりに熊本を訪れるという佐渡さん。2014年に公演で熊本を訪れた際に、阿蘇の温泉などを案内してもらい「大好きになった」といいます。

 あるテレビ番組のロケでも、行き先に南阿蘇をリクエストしたほど。

 「飛び入りで、地元の人たちと一緒にグランドゴルフをして、負けたんですよね。で、地震後に行ったら、そこがクローズで、復旧のための資材置き場になってて…」

 プライベートでも熊本を訪れていたという佐渡さん。熊本地震があった2016年は、トーンキュンストラー管弦楽団のツアー中で、早速、各会場で募金活動を始めました。

 「オーケストラのメンバーも募金箱を持ってロビーに立ってくれて、九百数十万円が集まりました。楽器が壊れたとか、被害にあった24学校を県立劇場が細かく調べて、丁寧にお金を割り当ててくださった。協力できたこともうれしかったですし、すごく感動しました」

2016年 熊本県南阿蘇村camera icon
2016年 熊本県南阿蘇村

 さらに、プロ奏者の卵である兵庫県のスーパーキッズ・オーケストラの小中高校生とともに、熊本へ。県庁のロビーや南阿蘇村、益城町などで演奏会を開きました。

 「県庁のロビーで演奏したときも、ものすごい人が来てくださいました。皆さんが『ありがとう』とスーパーキッズを送り出してくださる、その拍手は本当に感動的でした。僕らへの感謝もあるでしょうけど、それ以上に、熊本という場所を皆さんがいかに愛しているかということの表れだったように思います」

無力感の先に…

 「東日本大震災のときは、音楽家は何もできないんだって思ったんです。自衛隊や消防隊員、お医者さん、水を運ぶトラックの運転手さん、そうした仕事の尊さに比べて、音楽家は何もすることがない、なんてつまんない仕事なんだと」

 阪神・淡路大震災からの「心の復興のシンボル」として誕生した兵庫県立芸術文化センターの芸術監督をつとめてきた佐渡さんですが、2011年の東日本大震災では、真っ先に無力感があったといいます。

 「何カ月か経って被災地に行き、スーパーキッズ・オーケストラと『上を向いて歩こう』なんかを演奏すると、被災された方たちは泣いてらっしゃるんですよね。『地震が起きてから涙も出なかったけど、初めて涙が出ました』と。音楽を通して、素直な感情になれる。そういう魅力が音楽にはあるんでしょうね」

2016年 熊本県南阿蘇村camera icon
2016年 熊本県南阿蘇村

 今、ここで一緒に生きてることが喜びだと感じてもらえるために音楽がある。そして、兵庫県が震災から助けてもらったように、被災地に向かわなければならない。その思いで、東北をはじめ、熊本や能登など被災地での活動を続けてきました。

 「当たり前の生活ができなくなったとき、人と人がつながり、助け合って生きていくことを考えさせられました。そして、電気や水道、ガスはもちろん大事ですが、それだけで人は生きているのではない。そこに歌があったり、手拍子があったり、笑えたり。そうしたことが人を楽しくさせ、慰め、励ますことができる。“心のビタミン”が人には必要なんです。そう思って、震災直後の熊本にも訪れていました」

熊本地震から10年の節目に

 「震災から10年で熊本に行くということには、自分の中でも特別な感情があります。震災の時のこと、動いてくれた県職員の方のこと、県庁でのコンサートの興奮、募金活動をした時の思い、南阿蘇の友達のこと…いろんなことが詰まって、5月のツアーに向かうんだと思います」

 今回、新日本フィルハーモニーとの熊本公演の翌日、6月1日には、益城町で小中高校生たちの吹奏楽クリニックも予定されています。

 「あれから10年が経ち、今度は益城の子どもたちに会える。震災のことを覚えている子も、いない子もいるかもしれない。でも、お父さんお母さんが大変だったことは覚えているでしょう。そういうことは、しっかり伝えられたらなと思っています」

佐渡裕さんcamera icon
佐渡裕さん

 「大好きな熊本にまた行けることが、すごく楽しみ」と語る佐渡さん。最後に熊本のみなさんへのメッセージを聞きました。

 「今回は、新日本フィルハーモニー交響楽団と、今最高のヴァイオリン・ソリストである三浦文彰くんを迎えて、ブラームスの協奏曲と交響曲第1番という、クラシック音楽の醍醐味をぐっと盛り込んだプログラムになっています。音楽監督に就任して3年間の大きな成果を、ぜひ聴いていただきたいです。会場でたくさんの方にお会いできるのを楽しみにしています」

佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 ×三浦文彰(ヴァイオリン)

日時:5月31日(日)午後2時開演

会場:熊本県立劇場(熊本市中央区)

内容: ブラームスのヴァイオリン協奏曲、交響曲第1番 ほか

関連企画 佐渡裕氏による学生向け吹奏楽クリニック

日時:6月1日(月) 午後5時

会場: 益城町文化会館 ホール

内容:佐渡裕さんによるバンドクリニックを公開形式で実施。聴講は小学生以上から可能

モデルバンド: 益城町立広安西小学校、益城中学校、木山中学校吹奏楽部(合同バンド) 熊本県立第二高等学校

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