
熊本市の健軍駐屯地への配備が決まった長射程ミサイルの問題。過去に国内では、防衛施設の配備計画が中止されたことがあります。
「防衛省の様々な不適切な対応があって、地元の皆様にご迷惑をおかけしたことを改めてお詫び申し上げたい」
2020年6月、当時の河野太郎防衛大臣が、秋田、山口への地上配備型ミサイル防衛システム「イージス・アショア」の配備計画の停止を発表しました。
熊本の長射程ミサイルと秋田のイージス・アショア。長射程ミサイルは相手への反撃能力を持つミサイルで、船や地上の目標へ向けて撃ちます。また、移動発射式で、有事の際に健軍駐屯地にとどまることはないとされています。
一方、イージス・アショアは、飛来するミサイルを迎撃する防衛システムで、固定発射式です。2017年に秋田県と山口県への配備が閣議決定されました。
当時、イージス・アショア配備廃止を訴えて参院選秋田選挙区で初当選した寺田静議員に話を聞きました。

「当時のトランプ大統領との関係の中で、急遽、山口と秋田が名指しで配備地だということが決まって、何も情報がないままに計画がアナウンスされるという事態になって、地元では懸念の声が上がり始めました。秋田において、最も大きかったのは住宅地のすぐ目の前であるということだった」
数百メートルの範囲に高校や保育施設から高校、福祉施設があり、攻撃対象になるのではないか、ブースターの落下の懸念はないのか、懸念の声が上がったといいます。
熊本の長射程ミサイルとは別の防衛システムですが、共通点も浮かんできます。
①配備場所
秋田で配備場所に選定された新屋演習場のすぐ近くには、学校や住宅地が。熊本の健軍駐屯地も周辺に学校や病院などがあります。

②標的になる懸念
秋田の住民
「相手からこっちが狙われることになればそれが一番危険だと思っています」
熊本の住民
「他の国から狙われたりするのも…」「間違いなく標的になるでしょうね」
一部の専門家は、熊本の長射程ミサイルは移動式で、有事の際には移動しているため、標的になることはないと説明しています。
③住民説明なしの政策決定
秋田の住民
「県民、市民が自分たちの意見で決め権利を大事にして、話し合いをたくさん持ってほしいと思っています」
熊本の住民
「勝手にいきなりよ、この民主主義の世の中にいいんですか」
住民が納得のいく説明がないまま閣議決定されたことも、共通しています。当時、秋田ではどのような動きになったのでしょうか。
「決定打となったのは、説明資料のずさんさがあって、政府の信用が失われていった」
寺田さんは、防衛省が示した候補地のデータに重大な誤りが発覚したことや住民への説明姿勢に問題があったと話します。
「住民説明会を行うときに、この日だけは町内のお祭りの日だから、多くの方が参加できないから、この日だけは避けてくれと言ったのに、その日に説明会が行われたということがあって…」
さらに、住民説明会中に防衛省の職員が居眠りし「秋田を馬鹿にしているのではないか」との声が広がったといいます。
熊本と同じように、ミサイル配備を進める保守系の地盤が強固な秋田県でしたが、市民団体などが反対の声をあげ、徐々に世論が形成されるとともに、保守系だった当時の秋田県知事らも反対するなど党派を超えて配備廃止を求める動きが広まったといいます。

熊本県でも、各地で市民団体などによる反対運動が起こり始めています。
くまもと地域自治体研究所の高林秀明副理事長は「何よりも長射程ミサイルは敵基地攻撃能力があるということなので、今の日本の憲法から見ても問題があるんじゃないか」と話し、熊本でも多くの人に関心を持ってもらいたいと声をあげています。













