雪の中を走るクマが撮影された近くの温泉街では4日朝、男性が襲われる被害がありました。雪が降り積もってもなお、クマ被害が相次いでいます。
■雪が積もっても“いまだに痕跡”が
雪が積もる師走の北国。いまだクマへの警戒は続いています。先週、箱わなで380キロのヒグマが捕獲された北海道苫前町。この巨大なヒグマがいなくなっても住民の不安は消えていません。
苫前町猟友会 林豊行会長(76) 「(雪が)15センチくらいあるのかな」
巨大ヒグマ捕獲の直後にも、ここから2キロ離れた地点でヒグマの痕跡が確認されているといいます。
林豊行会長 「まだ近くの人は心配でしょう」
■温泉街で男性が襲われる
長野県では4日、雪道を歩くツキノワグマの姿が…。列島は“今季最強寒気”が流れ込んだにもかかわらず、いまだ冬眠しないクマが街中をうろつく異常事態です。
撮影者 「ガードレールの隙間から(クマが)歩いてくるのが見えて、子グマではなかった、大きかった」
住民は雪かきの対応に追われながらクマにも警戒しなくてはなりません。
クマが現れたのは長野県野沢温泉村。13カ所の外湯巡りなどが楽しめる温泉街ですが、午前6時半ごろ、雪かきをしていた78歳の男性が突然、クマに襲われました。
襲われた男性の知人 「意識はあるということ。顔と腕をけがしたみたいで病院の方へすぐに搬送」
この写真は、男性が襲われた場所から100メートルほど離れた所で撮影されました。男性が襲われてからわずか15分後に現れたといい、同じ個体とみられます。
撮影者 「怖いし注意しなきゃいけない。このちょうど下の方に中学校、小学校、保育園がある。ですからそれも心配」
■パンチ2発で撃退も…
辺り一面、銀世界となった岩手県奥州市。降り積もった雪に赤くにじむのは血です。吹雪のなか、60代女性がクマに襲われました。
襲われた女性の家族 「やぶからクマが出てきて、顔も鼻も傷付いたと」
富山市では新聞配達員の男女2人がクマに襲われたところ、近隣住民の勇気ある行動によって助けられたといいます。襲われた新聞配達員を助けた家の人はクマと遭遇し、パンチを2発食らわせて撃退したということです。
配達員の2人は病院に搬送されるも、意識はあったということです。
■撃たれても人里に執着
雪が降っても人身被害が相次ぐなか、訪ねたのは日本海側に位置する北海道の苫前町です。380キロの巨大ヒグマを捕獲したベテランハンターの林さんに4日、同行させてもらいました。
林さん 「わなの中に足跡は…なし」
積もる雪が根雪になるギリギリまで箱わなの設置を続けているといいます。
近年増える、人とクマのあつれき。対応に追われるハンターが語るのは2年前に遭遇したあるヒグマのエピソードです。
林豊行会長 「人を見ても恐れないクマ」
当時、クマの目撃情報を受けて駆け付けると…。
林さん 「クマが近寄ってきます」
デントコーンの畑の近く。車の存在に気が付いても近付いてくるヒグマの姿が。箱わなを設置して捕獲しました。
ヒグマの体の中から出てきたのは見覚えのない散弾銃の弾丸です。撃たれてもなお人里に現れたヒグマ。それだけ、人里の食べ物に執着していたのかもしれません。
■「春季管理捕獲」とは?
林豊行会長 「山のクマも飽和状態だと…」
そう語るハンターの林さんが根本を解決するために必要だと感じているのが「春期管理捕獲」の強化です。
政府が取りまとめた対策パッケージでも増えすぎたクマの個体数の削減・管理が必要とされています。そんななかで北海道が行う「春期管理捕獲」はまだ雪が残る春、2月から5月にかけて人里に現れるクマの管理を目的に捕獲する活動です。
林豊行会長 「(春に行うメリット)足跡は雪があった方が分かりやすい」
また、視界が開けているためハンターにとっても比較的安全。
元は1990年に北海道で廃止された「春グマ駆除」が近年の頭数増加を受け、2年前に再開された形です。
ただ、苫前町では人手不足で実施できていません。林さんが1人で稼働する日も多いという苫前町猟友会。会員数は現在9人です。会員の多くは農家で、春は繁忙期のため仮に予算がついたとしても人の確保は難しいといいます。
林豊行会長 「(猟友会の)ほとんどが農家の責任を持って先頭になって働かないといけない人たち。その報酬のために自分の仕事を置いて山に入れる人はまずいない」
北海道が先月発表した調査では、春期管理捕獲を今年実施しなかった自治体は回答を得た160のうち110に上りました。
道の担当者は、新たな人材を育成していくためにもいかに多くの自治体に取り組んでもらえるかを一番の課題に挙げています。









