
今年100周年を迎える「デフリンピック」が東京で開催されます。聴覚に障がいがあるアスリートが出場する4年に1度の国際スポーツ大会で、日本では初めての開催。70以上の国・地域から約3000人の選手が出場し、21競技が行われます。
熊本からは陸上、サッカー、ハンドボールに4人の選手が出場します。熊本学園大学4年の冨永幸佑選手(21)もその一人。100メートルと4×100メートルリレーに出場します。

生後6カ月のときに聴覚障がいがわかったという冨永選手。聞こえるのは「100デシベル以上、飛行機の音ぐらい」といいます。
小学生の時からゴルフやサッカー、野球など様々なスポーツに挑戦。陸上に出会ったのは、ろう学校中等部のときでした。
陸上を始めると、すぐに頭角を現し、障がいのない選手と一緒に出場した県大会では8位に入賞。高等部のときには、ろう学校の生徒で競う大会で全国2位に。大学進学後も陸上を続け、さらなる高みを目指していますが、大学入学前は孤独だったといいます。
「これまで日本各地に競技に行って、いつも孤独でした。大学でみんなで一緒に楽しくおしゃべりして気持ちも落ち着く。楽しくなりました」

チームメイトとのコミュニケーションはジェスチャーや口話など。後輩たちは「憧れです。めっちゃ速いから。高校から名前を知って、速いなあと」「(代表に選ばれたことは)自分のことのようにうれしくて、1位をとる感じで頑張ってほしい」とエールを送ります。
冨永選手の100メートルの自己ベストは、今年5月に更新した10秒89。現時点で、国内デフ記録ランキング2位の実力です。

「大学3年生まではプレッシャーがかなりありました。試合の緊張を取っ払って、楽しむことを考えて走ったら、自己ベストが出るようになりました。そういう考え方に変わってよかったと思います」
去年夏に台湾で行われた世界デフ陸上では準決勝敗退。日本が金メダルを獲得した4×100メートルリレーでは、決勝メンバーに冨永選手の名前はありませんでした。その悔しさをバネにこの1年間力を入れてきたのが体幹トレーニングです。

「腸腰筋を鍛える練習をします(レースの)後半が強くなります」
スタートダッシュで力み、後半で失速するレースが多かったという冨永選手。筋力アップを図り、効率的に地面に力が伝わるようフォームを改善しました。
「やっぱりメダルをとることは目指したいです。それと自分の自己ベストを突破したいので、一生懸命頑張りたいと思います」
さらに、その先に見据える将来は―

「社会の仕事の中で、コミュニケーションが必要なことが多いと思うので、手話や筆談をみなさんがわかるように普及していきたい」
東京2025デフリンピックは11月15日から26日。強い想いを胸にした冨永さんの夢の舞台が幕を開けます。













