
熊本地震からまもなく10年。地震に加え、水力発電所の貯水槽が崩落する「複合災害」に見舞われた地域があります。
地震で土砂崩れ…貯水槽の水が流出
南阿蘇村立野の新所地区。2016年4月、震度6強の地震による土砂崩れが発生しました。
山とともに崩れたのが、九州電力が設置する水力発電所の貯水槽です。約1万トンもの水が土砂とともに集落に流れ出ました。

「あの4月16日から見られんようになった。人と会えんようになったというのが一番辛かった。たいぎゃ、悔しかった…」
当時の区長、山内博史さんの自宅も濁流に飲み込まれました。被害を受けたのは9世帯26人。片島さん夫婦が亡くなりました。
「上から崩れて落ちてきたという感じで、乗用車が2台とトラクターもあって、全部流されて…。亡くなられた方の1人はあそこに埋まっていた」
九州電力は「貯水槽の決壊は地震による不可抗力で、法的責任はない」とした一方で「水の流出が家屋などの被害に影響を与えた」として、移転を前提に宅地を買い取る形で9世帯に補償金を支払いました。

山内さんも、先祖代々守ってきた土地を離れることになりました。

「4割の人が断腸の思いで、立野から違うところに行って生活されていますけど、その人たちとのつながりは、決してなくしてはいかんし、ここで起きたことももちろん忘れることはない。一生、生きている間は、ここで起きたことをちゃんと受け止めて、次の世代に伝えていかないと」
現地で進む復旧工事 災害対策は
この土地に水力発電施設が設けられたのは、100年以上前の大正3年(1914年)のことです。黒川の豊富な水量に支えられ、九州屈指の発電量を誇っていました。
現在、現地では復旧工事が進められています。元々、山の頂上付近にあった貯水槽は、北東に2キロほど離れた平坦部に移設しました。

黒川上流部の取水口から取り込んだ水を、貯水槽で量を調整。地震前は、山側と川側に2本の導水路を設置していましたが、新たにトンネルを掘削し、1本に統合しました。

導水路は、災害に強くするため、トンネルと水を流す管の2層構造となっています。
九州電力では初の取り組みで、担当者は「地震が仮に発生して、外側のコンクリートのトンネルにひびや亀裂が入っても、中の鉄管が破断しなければ水が流出しない構造」と説明します。
また、地震が発生すると、取水口が自動で閉まり、水を安全に河川に流すことができるようになっているとしています。

水力発電所の復旧工事の進捗率は75パーセント。来年12月から稼働予定です。
九州電力では、10年前の地震と同様の地震が発生しても機能できるような安全安心な設備を目指したいとしています。













