
「信号が見えづらいとか、買い物のときの商品や値段が見えづらいとか…」
日常生活で感じる不便をそう語るのは、赤﨑蛍さん(25)。中学1年生のとき、網膜の中心部が変性し、視力低下や視野中心部の見えにくさが生じる国指定の難病「黄斑ジストロフィー」と診断されました。
熊本市の白鷺電気工業で図面の設計などを担当している赤﨑さん。小さな文字が見づらい箇所は、ルーペで拡大して仕事をこなしています。
そんな赤﨑さんのもう一つの顔は、ロービジョンフットサル日本代表のキャプテンです。
ロービジョンフットサルとは
ロービジョンフットサルとは、弱視の選手が通常のフットサルとほぼ同じルールでプレーする競技です。ブラインドサッカーと異なり、アイマスクは装着せず、音の出ないボールを使用します。

ロービジョンフットサルは「それぞれの見え方の選手がいる中で、チームで1つの目になって、お互いの見えづらい部分をお互いで補い合えるのが魅力」と語ります。
実際に特殊ゴーグルを装着してロービジョンの世界を体験してみると、シルエットはわかるものの、表情は全く見えず、距離感もつかみにくい状態です。この状態でフットサルをするため、選手同士の声かけが非常に重要になります。
「真ん中が見えづらいこともあって、一番見たいところが見えづらいので、そこを外した周りの視野の部分で間接的にものを見る目の使い方を意識している」と赤﨑さんは説明します。
難病を乗り越え、プロの道へ

兄の影響で小学3年生からサッカーを始めた赤﨑さん。東海大星翔高校時代には、全国大会に出場。健常者と同じ環境でサッカーを続けていましたが、高校卒業後、県立盲学校に進学した際にロービジョンフットサルと出会います。
「視力が悪いというところで落ち込んだ時もあったんですけど、この競技を通して前向きに捉えるようになりました」
日本代表キャプテンとして、エースナンバー10番を背負う赤﨑さんの実力について、日本ブラインドサッカー協会の関係者は「1人でこじ開けられる力を持っています。得点源であり、チャンスメーカーであり、守備の要。すべて彼にかかっている」と評します。
世界一への挑戦
全国的に認知度が低く、環境も整っていないロービジョンフットサル。日本ブラインドサッカー協会の関係者は「当事者が自分の障がいをなかなか表に出しづらい状況があるので、代表チームがシンボリックな存在になって、世界で活躍する姿を通じ、障がい者の方々が世の中にカミングアウトしても問題なく過ごしやすいようになれば」と展望を語ります。

11月6日からトルコで開かれる世界選手権に出場する赤﨑さん。
「日本代表で日の丸を背負って世界と戦うのは、少しプレッシャーを感じます」
実は、パリ五輪でマラソン6位に入賞した赤﨑暁さんは、いとこ。「日本代表として彼に負けないぐらい頑張りたい」と意気込みます。
目標は「ロービジョンフットサル日本代表として世界一を取ること」。世界一への挑戦が始まります。
(「くまもとLive touch」10月20日放送)













